単純ヘルペスウイルス1型から作られた腫瘍溶解性ウイルス
タカラバイオ株式会社は12月21日、米ユタ大学ハンツマンがん研究所が実施する、悪性黒色腫対象の腫瘍溶解性ウイルスHF10と抗がん剤ニボルマブ併用による術前免疫療法の医師主導治験に対し、同社が開発中のHF10を治験薬として供給する契約を締結したと発表した。
腫瘍溶解性ウイルスは、正常な細胞内ではほとんど増殖せず、がん細胞内で特異的に増殖する。増殖によって直接的にがん細胞を破壊し、その際に放出されたウイルスが周囲のがん細胞に感染する。また、破壊されたがん細胞の断片ががんに対する宿主の免疫を活性化することで、投与部位以外のがんも縮小することが期待されるという。
HF10は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の自然変異弱毒化株で、がん局所に注入することで顕著な抗腫瘍作用を示すという。なお、同社は2016年12月に大塚製薬株式会社とHF10に関する国内独占的ライセンス契約を締結している。
ステージIIIB・IIIC・IVM1a切除可能な悪性黒色腫患者を対象に
同社はHF10の臨床開発を国内外で推進しており、米国では、切除不能な悪性黒色腫を対象とした抗がん剤イピリムマブとの併用第2相試験で安全性・効果に関し、良好な結果を得ているという。
今回、ハンツマンがん研究所が実施する試験では、イピリムマブ同様、悪性黒色腫の治療薬として普及が進むニボルマブとHF10との併用試験を予定。対象患者は切除可能な悪性黒色腫患者(ステージIIIB、IIICおよびIVM1a)で、目標症例は20例。主要評価項目は12週間の術前免疫療法後の病理学的奏効率で、試験期間は2018年1月~2022年10月を予定している。
また、同社は国内においても、悪性黒色腫および膵がん対象にHF10の開発を進めており、国内におけるHF10の早期の承認を目指していくとしている。
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・タカラバイオ株式会社 ニュースリリース