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がん細胞の増殖速度を維持するリン酸化シグナル経路を発見-京大

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2017年12月22日 PM12:45

リン酸化酵素「PLK1」とがん細胞の強い増殖能

京都大学は12月20日、細胞が本来持っている防御ネットワークを突き破り異常増殖をするという、がん細胞特有の性質を説明する分子機構を発見したと発表した。この研究は、同大放射線生物研究センターの古谷寛治講師と、井倉毅准教授、井倉正枝研究員らのグループによるもの。研究成果は、オンライン科学雑誌「eLife」に掲載された。

がん細胞が非常に強い増殖能を生み出す原因として、PLK1と呼ばれるリン酸化酵素の機能ががん細胞で活発に働くことがこれまでに示されていた。また、がんの治療では放射線療法や化学療法など細胞内の染色体DNAを傷つけることでがん増殖を止める手法が用いられるが、PLK1を多く発現したがん細胞は、このような治療に対して抵抗性を持ち、予後不良となることが多く報告されていた。そのため、PLK1はがん創薬の標的として注目されていたものの、正常細胞においても多くの増殖促進因子にPLK1が作用することがわかっており、効果的な抗がん剤は得られていなかった。

そこで今回、研究グループは、PLK1ががん細胞の増殖においてのみ作用する因子を同定することで、分子標的を明らかにするとともに、どのような仕組みでがん細胞が治療に対抗して増殖を続けることができるのかを理解することを目的として、研究を進めたという。

PLK1がRAD9をリン酸化、DNA損傷の感知能力失う

正常細胞では放射線などに曝されゲノムDNAに傷が生じると、DNA損傷を感知して細胞増殖を一旦停止させる防御ネットワークが働く。DNAチェックポイントと呼ばれるこの機能が発動されることでDNA損傷の修復が可能となるが、今回の研究ではそのチェックポイント機能を担うRAD9がPLK1の標的となるのではないかと予想。質量分析を行い検討したところ、PLK1がRAD9に対してリン酸化を付加することを見出した。また、PLK1によりリン酸化を受けたRAD9はDNA損傷の感知能力を失うこと、逆にPLK1がRAD9をリン酸化できなくなるようにしたがん細胞では本来増殖してしまう程度のDNA損傷を受けたとしても、増殖が極端に遅くなることも確認したという。


画像はリリースより

これらの結果はリン酸化酵素であるPLK1が、DNA損傷の「感知機構」を抑制することを示している。この知見から、PLK1の機能が活発ながん細胞での放射線・化学療法に対する耐性も説明できるという。ただし、すべてのがんでPLK1が高く発現するわけではないため、研究グループは、「なぜ特定のがんでのみPLK1を介したシグナル経路が使われるのかといったことにも踏み込み、がん細胞の個性に注目することで、個別治療に向けた基礎研究を展開しようと試みている」としている。

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