皮膚の幹細胞の中でも特に不明な点が多い真皮の幹細胞
名古屋大学は12月19日、皮膚の真皮組織における幹細胞の存在場所と、その維持・再生メカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の「名古屋大学メナード協同研究講座』と日本メナード化粧品株式会社、藤田保健衛生大学医学部応用細胞再生医学講座、皮膚科学講座が共同で行ったもの。研究成果は「Journal of Dermatological Science」に掲載されている。
画像はリリースより
皮膚は古くから研究が進められ、表皮においては、人工表皮の培養技術も確立されており、再生医療への実用化も進んでいる。しかし、真皮や皮下脂肪、毛包組織などにおいては、幹細胞の存在は報告されているものの、その再生メカニズムについては未だ不明な点が多く残されている。
研究グループは、これまでに皮膚幹細胞の研究を進め、その過程において幹細胞の分離培養技術や三次元培養皮膚の作製技術などを培い、さらに、加齢による変化や創傷治癒過程における幹細胞の役割について明らかにしていた。今回の研究は、皮膚の幹細胞の中でも特に不明な点が多い真皮の幹細胞をターゲットに進め、真皮の維持・再生メカニズムについて検討したという。
タイプ5コラーゲンの発現が高い特別な領域が存在
研究グループは、真皮の乳頭層と網状層の病理学的な違いに着目し、それぞれのエリアに存在する細胞や膠原線維の特徴について、詳細な解析を実施。その結果、真皮の乳頭層に幹細胞「CD271陽性細胞」が多く存在していることが明らかになったという。さらに、真皮幹細胞が存在する周囲にタイプ5コラーゲンが高発現していることを確認。この結果から、真皮の乳頭層に幹細胞が存在する、タイプ5コラーゲンの発現が高い特別な領域が存在していることがわかったという。
タイプ5コラーゲンは、血管新生や創傷治癒などに関わる機能的なコラーゲンとしてこれまでも知られていたが、幹細胞との関係については、研究されていなかったという。そこで、タイプ5コラーゲンの有無の条件にて真皮幹細胞を培養したところ、タイプ5コラーゲンが無いと幹細胞性が維持されず、減少していくことが判明。このことから、タイプ5コラーゲンは真皮幹細胞の未分化維持に重要な役割を果たしていることが明らかになったとしている。
今回の研究から、真皮幹細胞は乳頭層に存在し、そのエリアではタイプ5コラーゲンが高発現していることが明らかになった。研究グループは今後、この特殊な領域をターゲットとして、上手く制御する技術を開発することで、組織の再生を活性化し、表皮だけではなく皮膚全体の再生医療や健康・美容の維持、改善を目指した技術革新を目指す、としている。
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