同じ原因を持つ患者でも多様な発作型を示すてんかん
東京医科歯科大学は12月18日、脳のグリア細胞の異常が起こる部位の違いにより、異なるてんかん発作が起こることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学難治疾患研究所分子神経科学分野の田中光一教授らと京都大学の研究グループによるもの。研究成果は、国際科学誌「Glia」のオンライン版で発表された。
てんかんは、脳の神経細胞の過剰な電気的興奮に由来する発作を特徴とする疾患。てんかん発作は原因により多様な発作型を示すだけでなく、同じ原因を持つ患者でも多様な発作型を示す。しかし、多様な発作型の発症機序はわかっていない。
多様な発作型を示すてんかん患者では、脳のグリア細胞に存在するグルタミン酸輸送体(グリア型グルタミン酸輸送体)GLT1の発現が減少することやGLT1の遺伝子異常が報告されていることから、これらのグリア細胞の異常がてんかんの発症に関与することが推定されている。しかし、グリア型グルタミン酸輸送体の異常が、どのように多様な発作型を引き起こすのかは不明だ。
脳幹特異的GLT1欠損マウスでは突然死が発生
研究グループは今回、脳幹特異的GLT1欠損マウスと大脳皮質特異的GLT1欠損マウスを作成し、どのようなてんかん発作を引き起こし得るかを検討。その結果、脳幹特異的GLT1欠損マウスは、思春期以降に全身性強直性痙攣を伴うてんかん発作を示し、突然死したという。
画像はリリースより
一方、大脳皮質特異的GLT1欠損マウスは、小児期において一過性にミオクロニー発作(0.5秒以下の発作)やスパスム発作(1秒前後の発作)を示したが、突然死することはなかった。しかし、てんかん発作により大脳皮質の一部に神経細胞の脱落が観察されたという。
てんかん患者における突然死の頻度は、健常人の20倍以上あることが知られているが、その原因はわかっていない。今回作成した脳幹特異的GLT1欠損マウスは、てんかん患者における予期せぬ突然死の症状を再現しており、大脳皮質特異的GLT1欠損マウスは、てんかん性脳障害を伴う小児期のてんかんを再現している。この研究成果により、てんかんの病態解明や新規治療法開発に貢献できる、と研究グループは述べている。
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・東京医科歯科大学 プレスリリース