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A20ハプロ不全症、ベーチェット病に当てはまらない新たな病像を発見-岐阜大ら

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2017年12月18日 PM12:45

ベーチェット病類似の早期発症型自己炎症性疾患のA20ハプロ不全症

岐阜大学は12月12日、A20ハプロ不全症の新たな病像と治療法を発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科小児病態学の深尾敏幸教授らと東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科発生発達病態学分野の森尾友宏教授らの研究グループが、京都大学、、かずさDNA研究所などとの多施設共同研究により行ったもの。研究論文は、米アレルギー・喘息・免疫学学会誌「Journal of Allergy and Clinical Immunology」に掲載されている。


画像はリリースより

ベーチェット病は、口腔粘膜のアフタ性潰瘍、皮膚症状、眼のぶどう膜炎、外陰部潰瘍を主症状とし、関節炎、副睾丸炎、血管炎、消化器症状、神経症状などを副症状とする慢性再発性の全身炎症性疾患。急性炎症性発作を繰り返すことを特徴とし、原因はわかっていない。好発年齢は20~40代で、日本・韓国・中国中近東・東地中海沿岸に患者が集中分布する。国内の推定患者数は約2万人の難病だ。

このベーチェット病類似の早期発症型自己炎症性疾患として、TNFAIP3遺伝子がコードするタンパク質A20のハプロ不全を病因とするA20ハプロ不全症が2015年末に報告されている。A20ハプロ不全症では、TNFAIP3遺伝子のヘテロ接合性変異によりA20の半量が喪失することで、TNF-αシグナル伝達の異常が起こり、さまざまな種類の炎症性サイトカインが過剰産生され炎症が起こる。この原因遺伝子は顕性遺伝することが知られている。

難治患者5例に対するTNFα阻害薬の有効性を確認

今回、研究グループがA20ハプロ不全症患者について、Primary immunodeficiency database in Japan(PIDJ)、および厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)の自己炎症性疾患研究班と連携して情報を収集した結果、国内で9家系30症例(30名の小児およびその家族内の患者)の症例が判明。これまで、TNFAIP3遺伝子変異は若年発症ベーチェット病の原因であると報告されていたが、これらの症例の臨床情報を分析したところ、TNFAIP3遺伝子変異を原因とするベーチェット病には当てはまらない、新しい病像を確認したという。

症例には、ベーチェット病様の反復性口内炎、発疹、消化管潰瘍などの症状も見られたが、ベーチェット病の診断基準を満たさない症例が、詳細に分析できた22名中13名に存在した。さらに、ベーチェット病には通常見られない自己免疫疾患の合併を多く確認。また、橋本病(慢性甲状腺炎)を併発している例、口内炎だけの例、口内炎はないが下血する例(クローン病と診断されていた)なども見られたという。また、これらの症例のうち難治患者5例に、TNFα阻害薬の投与を行ったところ、有効性が確認されたとしている。

またTNFAIP3遺伝子変異の試験管内(in vitro)機能解析の結果、9家系で同定されたTNFAIP3遺伝子の変異はそれぞれの家系固有のものであり、全て病的変異であることを確認。既報告文献と同様、国内症例においてもTNF-α、IL-1β等の前炎症性サイトカイン産生の増加を認め、Th17細胞への分化過剰が認められたという。

遺伝子変異のある対象症例の血液を用いてIL-17AとIL-4をそれぞれ産生する細胞の量を比較測定した結果、IL-17A産生細胞(Th17)の過剰を確認した。さらに、今回同定された遺伝子変異を形質転換した細胞と正常な遺伝子を形質転換した細胞を培養し、TNF-αの刺激によるNF-κBの転写活性を実験。その結果、20ng/mlのTNF-αの刺激に対して、正常な遺伝子の細胞ではA20の働きによりNF-κBの活性が制御されるが、遺伝子変異のある細胞では、NF-κBが制御されにくいことが示されたとしている。

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