■熊本企業も参画、共同買収へ
化学及血清療法研究所は12日、明治グループや熊本県企業グループ、熊本県にワクチンや血漿分画製剤、動物薬の主要3事業を売却する基本合意書を締結したと発表した。事業譲渡額は500億円。2018年2月に予定される最終契約書の合意に基づき、化血研が現物出資等の方法で事業承継する新会社を設立、その後に明治グループ49%、熊本県企業グループ49%、熊本県2%の議決権比率で設立する買収会社が新会社の全株式を取得するスキームとなる。化血研は2015年に血液製剤の不正問題が発覚して以降、事業譲渡先を探していたが、受け皿として熊本県企業グループで結成されたコンソーシアムに、明治グループが参加する共同買収を受け入れ、ようやく決着した。
買収会社として参画するのは、明治ホールディングスとMeiji Seika ファルマの明治グループと、えがおホールディングス、学校法人君が淵学園、熊本放送、再春館製薬所、テレビ熊本、富田薬品、肥後銀行の7社で構成される熊本県企業グループ、熊本県も県議会の承認を得て出資を実施する方向。明治グループの買収会社における議決権比率は49%だが、代表取締役と取締役の過半数を指名する権利を持つため、連結子会社となる。
化血研は、主要3事業を売却し、奨学金給付等の非営利事業の活動に縮小する。血液製剤の不正に関する組織ぐるみの隠蔽で厚生労働省から110日間の業務停止命令を受け、2016年10月には日本脳炎ワクチンで、国の承認書に定められたウイルス不活化処理を一部実施していない原料を使って製造していたことも明るみになった。医薬品製造販売業を継続することはないとして、長年取引関係のあるアステラス製薬と事業譲渡交渉が行われてきたが、協議が決裂していた。
化血研は地元企業とも結びつきが強く、熊本経済に与える影響から、熊本市内の優良企業を中心に化血研の受け皿構想に向けたコンソーシアムが結成され、感染症領域に強い企業を探していたところ、明治グループが候補に浮上。明治グループの協力が得られたことで、明治グループ・熊本県企業グループ連合での枠組みで化血研に対する事業譲渡の提案を行い、今回の合意に至った。
従業員の雇用と待遇確保や、本社所在地を熊本市とすること、製品の安定供給や公衆衛生にかかわる研究開発の維持、熊本県内取引業者との取引維持など重要事項に関する基本的な考え方でも合意している。
化血研に対しては、様々な企業から事業譲渡の提案が持ちかけられ、中には100%子会社を条件にする企業もあった模様だ。株式取得後の新会社の経営・事業運営にあたる明治グループは、化血研の連結子会社化で、感染症に対する予防から治療までのバリューチェーン構築に加え、Meiji Seika ファルマの事業基盤を活用したワクチンなどの国内販売力の強化と海外展開、動物医薬品事業の拡大、バイオ医薬品の創薬・開発強化などを目指す。同社のガバナンス体制に従って新会社の指導・管理・監督を行うが、現場では化血研の従業員が引き続き業務を行うとしている。