約800名の禁煙方法、禁煙成功者数と失敗者数を調査
国立がん研究センターは12月12日、電子タバコによる禁煙の有効性を確認するため、過去5年間に紙巻きタバコの使用をやめる禁煙行動に取り組んだ約800名について、禁煙方法と禁煙成功者数、失敗者数を調査、分析を行い、その結果を発表した。
この研究成果は「International Journal of Environmental Research and Public Health」に掲載されている。
WHOたばこ規制枠組み条約(FCTC)では、締約国は禁煙支援に対する措置として、科学的根拠や優良事例に基づいた効果的な対策を講ずるべきとされている。医師による禁煙アドバイスや、健康診断の場における禁煙の助言および禁煙支援は有効性が報告されており、日本では医療保険を使ったニコチン依存症の治療や、メタボリックシンドローム該当者および予備群を対象とした特定健康診査・特定保健指導が実施されている。
電子タバコのよる禁煙効果については、世界的に意見がわかれており、電子タバコを使うことで喫煙をやめる、あるいは喫煙本数を減らすことについて、利点と欠点がともに指摘されている。電子タバコ支持者は、電子タバコが紙巻きたばこの健康影響を減らす潜在的可能性を持っており、喫煙者は紙巻きタバコより安全な製品へ切り替えることを可能にすると主張している。一方、電子タバコ批判者は、電子タバコが喫煙者の禁煙意欲を失わせ、かえってタバコの使用を増加させるリスクがあると主張している。
海外でのメタ解析結果とも一致
そこで今回の研究では、インターネット調査から、過去5年間に禁煙に取り組んだ20~69歳の禁煙施行者798名を分析し、禁煙方法と禁煙の成功者数/失敗者数をもとに電子タバコの禁煙効果を分析。その結果、電子タバコ使用による禁煙の有効性は低く、電子タバコを使用した人は、使用しなかった人よりもタバコをやめられた人が38%少なく、電子タバコが禁煙の成功確率を約1/3低下させていることが示されたという。その一方、禁煙外来を受診して、薬物療法(ニコチンを含まない薬の処方)を受けた人では、禁煙の成功確率が約2倍に上昇したとしている。
画像はリリースより
電子タバコが禁煙の成功確率を約1/3低下させたというこの調査結果は、米国など海外で分析・評価されている報告のメタ解析結果と一致。電子タバコが喫煙の全体的な減少に大きな貢献をする可能性は低く、禁煙の手段として推奨または促進すべきではないと考えられる。
今回の調査は断面調査であり、さまざまな調査上の限界・制約はあるものの、電子タバコによる禁煙の有効性を否定する結果となった。国立がん研究センターは、同研究結果などに基づき、「電子タバコが国内の喫煙者の減少に大きな貢献をする可能性は低く、禁煙の手段として推奨または促進すべきではない、また禁煙目的をうたう販売に対して適切な規制がなされる必要があると考えます」と述べている。
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・国立がん研究センター プレスリリース