医療廃棄物がソース・免疫抑制能が高い羊膜MSC
兵庫医科大学病院、および北海道大学病院は12月12日、羊膜間葉系幹細胞(羊膜MSC)によるクローン病および急性移植片対宿主病(GVHD)に対する第1/2相医師主導治験について、クローン病は2017年9月、急性GVHDは同年11月にそれぞれ厚生労働大臣へ治験届を提出したと発表した。
画像はリリースより
急性GVHDやクローン病といった難治性疾患には、副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤が治療に用いられるが、すべての人に必ずしも有効ではない。一方、MSCは細胞治療の有望な候補細胞として注目され、近年MSCを用いた臨床研究が国内外で数多く行われている。日本では、骨髄MSCが急性GVHDに対する再生医療等製品として承認を受け、すでに実用化。しかし、骨髄MSCは、骨髄採取に侵襲性があり、骨髄中の存在頻度が0.001~0.01%と非常に低く、治療に必要な細胞数を得るには長期間培養が必要であり高コストといった問題がある。
兵庫医科大学病院および北海道大学病院の研究グループは、これまでに羊膜MSCに関する前臨床研究を進め、羊膜MSCが骨髄MSCと同様に、多分化能および免疫抑制能を持つことを明らかにしている。骨髄MSCにはない羊膜MSCの特徴として、医療廃棄物がソース・含有するMSCが非常に多い・免疫抑制能が高いといった利点が挙げられ、低コスト・短期間・少ない投与量にてMSCを用いた細胞治療が実用化可能であることを示しているという。
骨髄MSCと比較し低コスト・製造が容易な羊膜MSCの製剤化に成功
研究グループは今回、骨髄MSCと比較し、低コストで、倫理的問題が少なく、安全性が向上し、製造が容易な羊膜MSCの製剤化に成功。そして、急性GVHDおよびクローン病に対する治療応用を目的に、第1/2相医師主導治験の計画を厚生労働大臣に提出したという。
今回の治験は、兵庫医科大学が羊膜MSCの治験製品(治験製品名:AM01)を提供し、兵庫医科大学病院・北海道大学病院双方が実施医療機関として関係診療科が参加して行う、二施設共同医師主導治験。急性GVHDの治験は、造血幹細胞移植を受け既存治療の副腎皮質ステロイド剤に治療抵抗性の急性GVHD患者を対象に実施し、クローン病の治験は、既存の治療で効果が不十分の中等症の活動期クローン病患者を対象に実施する。
同治験は、2019年度終了予定。数年の次相の治験を経て、条件付早期承認制度を利用し、再生医療等製品として早期製造販売承認取得を目指すとしている。
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・兵庫医科大学 研究成果