官民からの出資を受け、開発途上国で蔓延するマラリアや結核、顧みられない熱帯病に対する治療薬や診断薬、ワクチンの開発支援を行うグローバルヘルス技術振興基金(GHITファンド)は、第2期目となる2018~22年度の5カ年計画を策定し、22年度までにGHITファンドが投資した開発品のうち、2製品で日米欧規制当局からの承認取得を目指す。同ファンドのBTスリングスビーCEOは11日、都内で会見を行い、「2製品の承認取得後も、パイプラインが続くように強化していく」と述べ、探索研究から後期開発段階まで網羅的にカバーした投資戦略を打ち出した。
GHITファンドは、国内の創薬技術やイノベーションを生かした感染症治療薬開発を目指し、日本政府や民間企業、財団等による官民パートナーシップにより100億円の基金で13年に設立された。その後新規パートナーの参画や既存パートナーからの増資によって、資金規模が145億円まで拡大し、製品開発のパートナーシップを推進している。
13~17年度の第1期では、68件の研究開発に115億円を投資。探索研究も含めて約40件が進行しており、そのうちマラリアやシャーガス病、マイセトーマ治療薬や結核ワクチンなど7件が臨床試験に入っている。
第2期では、6月に資金拠出パートナーから第2期目に向けた融資として約200億円を獲得。190億円を研究開発に投資する。探索研究では、リード化合物の同定が5件、非臨床試験の実施が8件、安全性を評価するファース・イン・ヒューマン(FIH)試験(第I相試験)が5件、ヒトへの有効性を検証するプルーフ・オブ・コンセプト(POC)取得が3件、承認取得が2件と各ステージでの目標を設定した。
さらに、第III相試験段階に複数品目がステージアップすることを想定。GHITファンド単体での投資では、複数の第III相試験を同時に実施することは困難であるとして、POCを取得した製品を対象に、国内外の助成機関へ共同投資を呼びかける予定。臨床試験の支援機関「EDCTP」が8日、アステラス製薬や独メルクが参画する新規プラジカンテル小児製剤の第III相試験に約2億6000万円を投資し、GHITファンドと共同で開発を推進することを発表している。
スリングスビー氏は、23年度の他の助成機関による共同投資額について、「GHITファンドによる190億円の投資と同額にまで引き上げる」との方向性を示した。