HER2陽性乳がんに加えHER2低発現乳がんでも有用性示唆
第一三共株式会社は12月8日、HER2に対する抗体薬物複合体DS-8201の第1相臨床試験における、HER2陽性およびHER2低発現の乳がん患者を対象とした安全性と有効性に関する最新データについて、米国で開催されたサンアトニオ乳がんシンポジウムで発表したとし、その概要について公表した。
抗体薬物複合体(ADC)は、抗体医薬と薬物(低分子医薬)を適切なリンカーを介して結合させた医薬群。がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体医薬を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高めた薬剤である。
今回の試験において、HER2陽性およびHER2低発現の乳がん患者を対象とした安全性は、グレード3の有害事象として、好中球数減少(10.4%)、白血球数減少(10.4%)等を確認。グレード4の有害事象として、好中球数減少(4.3%)、血小板数減少(2.6%)、貧血(0.9%)がみられた。また、グレード5の有害事象として、肺臓炎の可能性のある2症例が報告され、評価委員会にて精査される予定だという。
HER2低発現乳がんを対象とした開発も検討
HER2陽性の再発・転移性乳がん患者を対象とした有効性については、T-DM1(トラスツズマブにエムタンシンを結合させたADC)による前治療を受けた患者57名において、全奏効率は61.4%、病勢コントロール率は94.7%だった。また、同試験のHER2低発現の乳がん患者を対象とした有効性については、前治療を受けた患者19名において全奏効率は31.6%、病勢コントロール率は84.2%だったという。
DS-8201は現在、HER2陽性の再発・転移性乳がんを対象とした第2相臨床試験を実施中だが、同試験の最新データより、HER2陽性乳がんに加えHER2低発現乳がんにおいてもその有用性が示唆された。今後、HER2低発現乳がんを対象とした開発の次ステップについても検討していきたいとしている。
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・第一三共株式会社 ニュースリリース