不明だったDPP-4阻害薬による水疱性類天疱瘡のリスク因子
北海道大学は12月7日、DPP-4阻害薬の服用によって生じた「非炎症型水疱性類天疱瘡」患者の86%が、特定の白血球型「HLA-DQB1*03:01」をもつことを発見したと発表した。この研究は、同大大学病院の氏家英之講師らと理化学研究所統合生命医科学研究センターの研究グループによるもの。研究成果は「Journal of Investigative Dermatology」に掲載されている。
画像はリリースより
DPP-4阻害薬は2型糖尿病の治療薬として広く用いられているが、服用した患者の一部に水疱性類天疱瘡が生じることが知られている。水疱性類天疱瘡は、皮膚に存在する「17型コラーゲン(BP180タンパク)」や「BP230タンパク」に対する自己抗体によって、全身の皮膚や粘膜に水疱やびらん、紅斑が生じる指定難病。この疾患は高齢者に生じることが多く、重症となることもあるため発症予防が望まれるが、DPP-4阻害薬の服用によって水疱性類天疱瘡が生じるリスク因子は解明されていなかった。
水疱性類天疱瘡は、症状によって「非炎症型」と「炎症型」の2種類に分類される。先行研究からDPP-4阻害薬の服用による水疱性類天疱瘡は「非炎症型」が多いことがわかっている。今回の研究では、DPP-4阻害薬の服用者に生じた水疱性類天疱瘡30例の皮膚症状や自己抗体を調べ、それらを「非炎症型」と「炎症型」に分類し、Human Leukocyte Antigen(HLA)遺伝子を解析。また、DPP-4阻害薬の服用とは関係のない通常の水疱性類天疱瘡72例とDPP-4阻害薬服用中の糖尿病患者61例のHLAも解析し、一般的な日本人873例のHLAデータと比較した。
一般的な日本人やDPP-4阻害薬服用者と比較して高頻度に
研究の結果、DPP-4阻害薬の服用による水疱性類天疱瘡30例では、紅斑が少ない「非炎症型」が21例(70%)と大半を占めていることが判明。「非炎症型」水疱性類天疱瘡の発症時に服用していたDPP-4阻害薬の内訳は、ビルダグリプチン7件、アログリプチン4件、テネリグリプチン4件、リナグリプチン4件、アナグリプチン1件、シタグリプチン1件だった。
HLAを解析した結果、「非炎症型」のDPP-4阻害薬による水疱性類天疱瘡の患者の86%がHLA遺伝子「HLA-DQB1*03:01」を保有しており、一般的な日本人の保有率18%やDPP-4阻害薬を服用している2型糖尿病患者の保有率31%と比較して、統計的に高頻度であることが明らかになった(オッズ比はそれぞれ27.6、13.3)。一方、通常の水疱性類天疱瘡では、同じHLAの保有率は26%で、一般的な日本人と比較して統計的には差がなかったという。
今回の研究により、HLA-DQB1*03:01は通常の水疱性類天疱瘡や2型糖尿病とは関連せず、DPP-4阻害薬服用者の水疱性類天疱瘡の発症に密接に関連することが明らかになった。研究グループは、HLA-DQB1*03:01を保有する人がDPP-4阻害薬の服用中に水疱性類天疱瘡を発症する確率は明らかとなっていないため、今後多数例での研究が必要としている。
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・北海道大学 プレスリリース