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血友病患者の“関節寿命”延伸へ、新たな治療選択肢が誕生―CSLベーリングがセミナー開催

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2017年12月06日 PM04:00

血友病患者の寿命は延びたが、関節の寿命は未だ短い

CSLベーリング株式会社は、血友病Aを適応症とする半減期延長型遺伝子組み換え血液凝固第VIII因子製剤「(R)」(一般名:ロノクトコグ アルファ(遺伝子組換え))を、2017年12月1日に発売した。発売を翌日に控えた11月30日、同社は都内で記者発表会を開催。東京医科大学臨床検査医学分野の天野景裕教授と東京大学医科学研究所附属病院関節外科の竹谷英之講師が講演した。


左) 臨床検査医学分野 天野景裕教授
右) 医科学研究所附属病院 
関節外科 竹谷英之講師

血友病患者で問題となる出血症状。なかでも70~80%を占める関節内出血は、繰り返すにつれ、慢性的に関節が変化し、血友病性関節症を発症。患者のQOLを著しく低下させる。出血は生後間もない時期から始まるが、関節内出血から運動制限、関節支持筋肉の萎縮、関節への負担増により関節内出血が起こるという負のサイクルに陥ると、20歳になる頃には関節が破壊され、40代で人工関節が必要となるという。

血友病患者の平均寿命は、治療の進歩とともに少しずつ延びており、21世紀には健常男性と同程度の寿命を望めるようになった。「寿命が延びたとはいえ、致命的な出血を抑制できるようになっただけ。血友病性関節症の問題は残っている。寿命と同じくらいに、いかにして関節の寿命を延ばすかが、今後の治療における課題となる」(竹谷氏)

安定性を高めた単鎖構造で半減期を延長、この特徴を活かした効果的な治療方法とは

血友病治療の基本である血液凝固因子の「補充療法」は、「出血時補充療法」「予備的補充療法」「」の3通り。出血時に止血目的で行う「出血時補充療法」や、出血が見込まれる場面の前に行う「予備的補充療法」が具体的な出血場面を想定して補充を行うのに対し、「」は、出血の有無や活動負荷に関わらず一定間隔で凝固因子を補充する方法だ。重症の血友病患者でも、定期補充療法を行うことで、中等症のレベルで生活することが可能となる。平成28年度の調査(エイズ予防財団「平成28年度血液凝固異常症全国調査報告書」)では、もっとも出血しやすい世代といわれる2~20歳の血友病患者の9割以上が、定期補充療法を実施している。

エイフスチラは、薬物動態特性を改善し、均一性の高い製剤を血友病A患者に提供することを目指して開発された、国内初のシングルチェーン(単鎖)構造をもった遺伝子組み換え血液凝固第VIII因子(単鎖rFVIII)製剤。血液凝固第VIII因子の分子安定性を高め、週2~3回の投与で出血予防効果をもたらす。複数の容量をそろえ、患者の利便性も図ったという。臨床試験の結果からは、同剤の定期補充療法中の患者において、年間自然出血率(AsBR)の中央値が0.00と、優れた治療効果が示されている。

同剤は、全長型血液凝固第VIII因子製剤に比べて血中半減期が長く、投与間隔を調整することで、12歳未満でも血漿中の血液凝固第VIII因子活性を3%以上にキープすることが可能だ。「3%を境に関節内出血の回数が変わることから、中等症の中でも3%あるかないかで重症と軽症に分けられる」と天野氏。「エイフスチラの定期補充療法をうまく使うことで、3%を下回らなければ、予期せぬ出血までも防げる」(天野氏)と、期待をのぞかせた。血友病治療は、患者の寿命を延ばすことを目指していた時代から、患者に合わせた適切な個別化治療で長期的なQOL向上を目指す時代に入ったようである。

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