従来法では誘導の安定性や効率の面にハードル
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は12月1日、ヒトiPS細胞から高効率で安定的に骨格筋細胞へと分化誘導する手法の確立し、創薬スクリーニングに使えるレベルの品質を確保することに成功したと発表した。この研究は、同研究所内村智也特定研究員、同研究所臨床応用研究部門の櫻井英俊准教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Stem Cell Research」に掲載されている。
画像はリリースより
現在、ほとんどの筋肉の難病には有効な治療法が確立されておらず、支持療法に限定されている。近年、iPS細胞を用いた創薬スクリーニングは新規医薬品の開発に有用であることがわかってきているが、筋疾患患者由来のiPS細胞を用いて創薬スクリーニングを実施するためには、効率よく再現性のある骨格筋細胞の分化誘導法が必須だ。
これまでに研究グループは、テトラサイクリン系抗生物質を用いて、骨格筋の分化を制御している転写遺伝子であるMyoD1を強制発現させることによる分化誘導法を報告。さまざまな筋疾患の病態再現に役立ててきたが、この方法で創薬スクリーニングを実施するには、誘導の安定性や効率の面で技術的なハードルがあったという。
384ウェルプレートでも平均誘導効率90%以上
今回の研究では、培地などの交換のステップを再検討し、フィーダーフリー培養法で維持されたヒトiPS細胞からでも、効率よく骨格筋細胞に分化誘導するプロトコールを開発。また、ハイスループットスクリーニングで用いられる96ウェルプレートや384ウェルプレートでの安定した分化誘導を行うための技術開発を行い、分化誘導の開始は比較的大きい培養皿で行い、分化誘導開始3日目から4日目の間に一度細胞をはがし、96ウェルプレートや384ウェルプレートに播き直すことで、分化誘導の安定性が増すことがわかったという。この方法は384ウェルプレートでも平均誘導効率は90%以上で、ばらつきを示す変動係数(CV値)が1.86%と、創薬スクリーニングに用いることができるレベルの高効率と安定性を得ることができたとしている。
今回の研究成果について、研究グループは、「筋疾患患者さん由来iPS細胞を用いた創薬研究が一層進むことが期待されます」と述べている。
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・京都大学iPS細胞研究所 プレスリリース