がん医療水準の均てん化を評価する体制構築に向けて
国立がん研究センターは11月29日、同がん対策情報センターががん診療連携拠点病院を中心とする全国297施設で2013年にがんと診断された患者を対象に実施した治療実績調査の結果を発表した。
この調査は、2013年にがんと診断された患者45万3,660人について、2016年に引き続き(2012年データは31万2,381人)各がん種と支持療法で選定した標準治療・検査9項目の実施率と標準治療を行わなかった理由について調べたもの。科学的根拠に基づいた標準治療に対し、各施設で実際に行われた診療を調査することで、がん医療水準の均てん化の評価体制構築へ向けた検討を行うことを目的としている。
測定は2011年症例を対象とした試験的調査に始まり、今回が3度目。選定した標準治療の対象となる症例を院内がん登録データより抽出し、各施設で行われた診療をDPCもしくはレセプトデータで収集、突合し、標準治療実施率の算出を行った。なお、標準治療は患者の状態によっては控える判断をすることも必要であることから、未実施理由の妥当性についても調査したという。
2012年と2013年の標準治療の実施率に大きな変化はなし
2013年症例を調査した結果、ほとんどの項目で2012年と2013年の標準治療の実施率に大きな変化はなく、項目により施設間で差がみられたという。実施率が上昇した例としては、2012年症例で実施率の低さが課題となった臓器横断指標(制吐剤の使用の有無)があげられた。この項目は2012年症例において、未実施理由を加味しない値で68.7%の実施率であったの対し、2013年症例においては73.2%にまで上昇。このがん診療評価指標(QI)に関しては、2016年と2017年の両調査に参加した施設内でも同率の上昇がみられたという。
全9項目中6項目の実施率は、2016年とほぼ同一か多少の上昇がみられた。解析結果に患者要因により実施しなかったものを加味すると、9項目中6項目で適切な治療の実施率として90%以上だった一方で、乳がんに対する乳房切除術で再発高リスク症例に対する術後放射線療法は、適切な治療を加味しても71.1%、催吐高リスク化学療法前の予防制吐剤投与は76.2%だったという。
標準治療を実施するかどうかは、ステージや全身状態だけではなくさまざまな要素により判断される。そのため、研究グループは、「これらの結果について解釈には注意を払う必要がある」と述べている。
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・国立がん研究センター プレスリリース