卵巣がん230例の患者血液DNAを用いた調査により
慶應義塾大学は11月29日、日本人の卵巣がん患者における遺伝性がんの頻度と、その特徴を明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部産婦人科学教室の平沢晃専任講師ら、徳島大学大学院医歯薬学研究部人類遺伝学分野の井本逸勢教授、防衛医科大学校医学教育部医学科病態病理学の津田均教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Oncotarget」で公開された。
早期発見が困難な卵巣がんは、5年生存率が40%以下と、予後不良ながん。国内の年齢調整死亡率は、上昇傾向にあり、卵巣がんの発症リスクが高い人を抽出して適切ながん予防策を講じ、死亡率減少を図ることが求められている。
研究グループは、慶應義塾大学医学部産婦人科学教室バイオバンクに保管されている、卵管がんおよび腹膜がんを含む卵巣がん230例の患者から研究のために提供された血液DNAを用いて、79個(一部は75個)の遺伝性卵巣がん関連遺伝子の生殖細胞系列に存在する病気と関連した変異の有無を調査した。
合計11遺伝子の変異を41例で確認
調査の結果、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の原因遺伝子であるBRCA1とBRCA2(BRCA1/2)の変異は、それぞれ19例(8.3%)と8例(3.5%)。リンチ症候群の原因遺伝子であるミスマッチ修復遺伝子の変異を6例(2.6%)検出したのをはじめ、合計11遺伝子の変異を41例(17.8%)で認めたという。
画像はリリースより
BRCA1/2の変異保持者、あるいはすべての遺伝性卵巣がん関連遺伝子の変異保持者は、それぞれの変異を保持していない人と比べ、より若年で診断され、第1度または第2度近親者に卵巣がん患者がおり、がんの組織型としては高異型度漿液性がん(HGSOC)が多いことが判明。第1度または第2度近親者に卵巣がんの患者がいる場合やHGSOCタイプの卵巣がんを発症した場合には、これら以外の場合に比べて、卵巣がんの発症は遺伝性の可能性が高くなることも示された。
今回の研究では、遺伝性卵巣がん患者の臨床的特徴が明らかになった。これらの特徴が認められた場合は、遺伝的要因を持つ可能性が高いと考え、遺伝カウンセリングや遺伝子検査によって自身や血縁者のリスクを把握し、予防策をたてることで健康を維持できる可能性がある、と研究グループは述べている。
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・慶應義塾大学 プレスリリース