既存の装置では高感度で乳がんを検出することが困難
名古屋大学は11月28日、新型シリコン光センサを用いた小型PET装置の開発に成功したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の山本誠一教授、加藤克彦教授、中西恒平大学院修士課程が、名古屋大学医学部附属病院の阿部真治技師長、藤田尚利技師、東北大学サイクロトロンセンターの渡部浩司教授と共同で行ったもの。研究成果は「Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A(電子版)」に掲載されている。
全身用のポジトロン放射型断層撮像法(PET)装置は、腫瘍の早期発見に有用な医療機器として注目されている。しかし、全身用PET装置を用いた乳がんの検出においては、市販の全身用PET装置では検出器リング径が80cm程度と大きく、また、体幹部による消滅ガンマ線の吸収が大きいため、高感度で乳がんを検出することが困難だった。
頭部用PET装置としても利用可能
今回、研究グループは乳房のみを測定可能な小型のPET装置を開発。この装置は検出器リング径が26cmと小さく、体幹部を計測することなく乳房のみを測定可能。そのため、体幹部によるガンマ線の吸収を受けず、リング径が小さいため高い感度で測定が可能になったという。
画像はリリースより
この小型PET装置は、新型のシリコン光センサであるシリコンフォトマルを用いたことで、高性能化と小型化を実現した。シリコンフォトマルはサイズが小さく薄いため、空間分解能を向上でき、検出器リング径を縮小化にも成功。また、PETを構成する検出器ユニットを曲面にしたため、ほぼ円形の検出器リングを構成でき、空間分解能も2mm前後と高い性能が得られたという。
同装置は、乳がんの測定を高分解能で測定できるだけでなく、ヒトの頭部も入る大きさを有するため、頭部用PET装置としても利用可能。研究グループは「アルツハイマー病の早期発見などに威力を発揮するものと期待される」と述べ、今後はメーカーと協力しながら、製品化を進めていく予定としている。
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・名古屋大学 プレスリリース