機能的な神経回路の完成に不可欠なシナプス刈り込み
東京大学は11月22日、発達期の小脳における自発的な神経活動の成熟過程とシナプス刈り込みの関係を明らかにする研究結果を発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科機能生物学専攻神経生理学分野のジャンマルク グッド研究員(研究当時)と、狩野方伸教授の研究グループが、山梨大学大学院総合研究部医学域神経生理学の喜多村和郎教授らの研究グループと共同で行ったもの。研究成果は、「Cell Reports」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
生後間もない脳には過剰な神経結合(シナプス)が存在するが、発達の過程で必要なシナプスが強化されて残るとともに不要なシナプスが除去され、機能的な神経回路が完成する。この過程は「シナプス刈り込み」と呼ばれ、機能的な神経回路ができあがるために不可欠である。
これまでの研究から、発達の特定の時期に起こるシナプス刈り込みの異常は神経回路の発達異常を引き起こし、自閉スペクトラム症など発達障害の原因となる可能性が指摘されている。シナプス刈り込みは神経活動に依存して進むと考えられていたが、生後発達期にどのようなパターンの神経活動が生じているのか、またそれがシナプス刈り込みとどのような関係にあるのかは不明だった。
プルキンエ細胞の高い同期性、発達が進むにつれて減少
今回、研究グループは、発達期のシナプス刈り込み過程の詳細な解析が進んでいるマウス小脳の登上線維とプルキンエ細胞に着目。生後間もないマウスにおいては、プルキンエ細胞同士の自発活動が高い同期性を示し、その同期性は発達が進むにつれて減少することが判明したという。さらに、この同期性の減少がシナプス刈り込みによる登上線維の配線の変化と登上線維の活動パターンの変化の両方によって起こっていることが明らかになったとしている。
今回の研究では、自発活動とシナプス刈り込みの関係について明らかになった。近年、自閉スペクトラム症モデルマウスを用いた研究では、発達期の小脳の活動が大脳の活動を調節することで大脳回路の正常な発達を促すことが示唆されており、小脳のみならず大脳や他の脳部位との関係について研究をすすめることで、脳全体の機能的発達が神経回路レベルで解明されることが期待される、と研究グループは述べている。
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