国立がん研究センターは27日、中国、韓国、シンガポール、台湾で第1相試験を実施する早期新薬開発拠点がコンソーシアムを構築したと発表した。アジア各国の医療機関が強固なタッグを組み、胃癌や肝臓癌など、アジアの特性を生かした新薬開発の共同実施を加速させる。コンソーシアムは2018年初旬にも始動する予定で、各施設の人材交流を進めて国際共同医師主導治験などに取り組む。
コンソーシアムの参加医療機関は、国立がん研究センター、プリンス・オブ・ウェールズ病院、香港中文大学医学院、国立台湾大学医学院附設医院、国立シンガポールがんセンター、国立ソウル大学病院。これらアジア地域の主な早期新薬開発拠点が連携体制を組むと共にコンソーシアムを構築し、企業主導、医師主導にかかわらず、参加医療機関が国際共同臨床試験の機会を相互に共有し、アジア地域で第1相試験や共同研究を実施していく。
また、製薬企業に対してコンソーシアムの活用を働きかける。これにより、コンソーシアムのプラットフォームを用いた企業主導のアジア国際共同治験を加速させ、日本の国立がん研究センターの医師が主導する形でアジア国際共同医師主導治験、共同研究も実施していく予定。
さらに、製薬企業の早期新薬開発部門とアジアの主な医療機関の第1相試験センターの連携を強化し、アジアにおける癌の早期新薬開発から後期開発を手がけるアジア共同治験への将来的な橋渡しを視野に入れ、コンソーシアムを包括的に展開していく構想もある。
このほか、アジアにおけるゲノム医療を促進し、希少癌の新薬開発で連携を模索すると共に、アジア各国の臨床試験をめぐる薬事規制要件、倫理審査委員会の体制の違いに関する研究に取り組み、情報収集体制の充実も図っていく。
同センター中央病院の藤原康弘副院長は「胃癌や肝臓癌、胆道癌などはアジア人で多く発症し、このような癌では欧米が主導するものではなく、アジアが主導するアジアに合った創薬開発の振興が必要。アジア各国の一流の医療機関だけで構成された臨床試験グループで国際共同治験を行っていくことには、大きな意義がある」とのコメントを発表した。