巨大かつ非常に高価な現在の脳磁場計測装置
東北大学は11月24日、室温で簡便に動作する、高感度かつ高分解能のトンネル磁気抵抗(TMR)素子生体磁気センサを開発し、α波の検出に成功したと発表した。この研究は、同大大学院工学研究科応用物理学専攻の安藤康夫教授のグループが、同大大学院医学系研究科の中里信和教授のグループおよびコニカミノルタ株式会社のグループと共同で行ったもの。研究成果は、日本磁気学会第5回岩崎コンファレンス「社会基盤の向上につながる磁気センサとその活用」において基調講演として発表された。
画像はリリースより
脳内の活動を知るためには電気測定による脳波計測が一般的だが、これは頭皮の表面を測定しているだけで、脳内のどこで活動が起きているかを直接的に知ることはできない。一方、脳内活動により発生する磁場を測定すれば、脳内のどこでどのような活動が起きているかの詳細を知ることができるが、現在の脳磁場計測装置は巨大でかつ非常に高価なものしか存在していない。これらのことから、室温動作かつ小型で身体に密着して測定ができるセンサの実現が望まれてきた。
心磁場測定の高速化も同時に実現
共同研究グループは、TMR素子を用いた生体磁場検出用センサの飛躍的な高感度化と低ノイズ化に成功し、脳からのα波に相当する磁場信号(脳磁図)の検出に成功。既存の脳磁計では、高価な液体ヘリウムを用いた冷却が必要であったが、今回、世界で初めて室温で簡便に動作するTMR素子で脳磁場をとらえたという。また、同素子を用いた心磁場計測において、世界で初めて積算なしで信号検出することに成功。心臓の活動の様子をリアルタイムで非侵襲に測定可能であることから、虚血性心疾患や不整脈等の心疾患の診断が大幅に向上することが期待できるという。
さらに、これらの計測技術は、特殊なシールドルームが不要で、かつ被験者が動きながらの測定も原理的には可能であるため、リラックスした環境で、脳や心臓をモニタできる。将来的には、ウェアラブルな素子で、運動時や車載などの環境においても、被験者が無意識のうちに測定が可能になると考えられる。ウェアラブル化により、TMR磁気センサの応用範囲は格段に広がることが期待され、計測医療分野に大きな変革をもたらす、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・東北大学 プレスリリース