非専門医による慢性便秘症診療の“道しるべ”として
マイランEPD合同会社は11月22日、国内で初めての慢性便秘症診療ガイドライン発刊と、「アミティーザ(R)」(一般名:ルビプロストン)の発売から5年を迎えたことを受け、メディアセミナーを開催。横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室 主任教授・診療部長の中島淳氏が講演した。
横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室
主任教授・診療部長 中島淳氏
高齢化に伴い、日本では今後、慢性便秘症患者の増加が予想される。同ガイドライン作成に関わった中島氏は、「慢性便秘症は、内科・外科だけでなく、婦人科や泌尿器科、精神科などの非専門医が診療することが多い『診療科横断的疾患』」と説明。また近年、海外での新薬開発が活発になったことや、便秘症での有害事象も散見されるようになったことなどを受けて、「非専門医が慢性便秘症を診療する際の“道しるべ”となる手引きの必要性が高まった」と同ガイドライン作成の経緯を語った。
酸化マグネシウムやルビプロストンの処方が基本、刺激性下剤は頓用使用で
同ガイドラインは、第1章「定義・分類・診断基準」、第2章「疫学」、第3章「病態生理」、第4章「診断」、第5章「治療」からなる。中島氏は「一番重要なのは『治療』の部分」と解説。第5章では治療に関する14のクリニカルクエスチョン(CQ)が設定されている。今回、内服薬のなかで「推奨の強さ1」、「エビデンスレベルA」を得たのが浸透圧性下剤と上皮機能変容薬だ。
浸透圧性下剤では、酸化マグネシウムが国内で長く使用されてきており、「国内の便秘治療では、9割以上が酸化マグネシウムを使っている」(中島氏)ことからも、今回の推奨度になったという。しかし併用注意薬が多く、高齢者のように腎機能が低下している場合は高マグネシウム血症に注意が必要であることから、定期的なマグネシウム測定が推奨される。中島氏は2015年に起きた患者の死亡例についても触れ、「多く使われているが、なかには重篤な副作用を起こす場合もある」と注意を呼びかけた。
上皮機能変容薬では、2012年にルビプロストンが慢性便秘症の効能・効果で発売された。ルビプロストンは、小腸上皮頂端膜(腸管内腔側)に存在するClC-2クロライドチャネルを活性化し、腸管内への水分分泌を促進。便を軟らかくして、腸管内の輸送を高めて排便を促進する。妊婦には投与禁忌で、若年女性に生じやすい悪心の副作用に注意が必要だ。しかし高齢者に対しては悪心が少ないことから、中島氏は「高齢者には忍容性が高い」と解説した。
また、国内で多く処方されている刺激性下剤は「推奨の強さ2」、「エビデンスレベルB」。「非常に強力で依存性もある」(中島氏)などの理由から、頓用または短期間での使用が提案されている。
慢性便秘症の治療の基本は「緩下剤(酸化マグネシウム・ルビプロストン)を出して、それでも効かない場合は刺激性下剤の頓用使用」と中島氏。「高齢者にはルビプロストンが望ましい」と強調した。
中島氏「便秘治療のゴールは完全排便」
また臨床現場における課題として、「便秘の患者は、1回目は病院へ行くが2回目からは薬局に行く人が多い」と中島氏。国内では、「酸化マグネシウムだけ」「刺激性下剤だけ」など1種類の薬剤だけを処方する医師が多いことから、1種類だけでは効果がなかったり、効きすぎて下痢をしてしまったりすることで、服薬を断念する患者が多いという。また、便秘で受診している患者に対して、毎日便が出ていることだけを確認し「それは便秘でない」と言う医師もいるという。
「便秘治療の究極のゴールは完全排便」と中島氏。完全排便ができないと、残便感、頻回数になり排便に時間がかかるため、治療満足度が低くなるという。完全排便への治療の進め方としては、欧米のBristolスケールのタイプ4(平滑で柔らかいソーセージ状の便)にすることが重要だという。治療のコツとして、患者に排便した日と便の形状を記録してもらうことで、便形をタイプ4にするよう処方内容を修正していくことが望ましいとした。
今回のガイドラインでは、便秘を「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義。中島氏は「便秘を訴える患者をどう診るか。超高齢社会において、今まさに問われている」とした。
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