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アルツハイマー病の病因物質Aβを低減する既存薬の組み合わせを同定-CiRA

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2017年11月27日 PM12:45

AD患者由来iPS細胞を用いた化合物スクリーニング系を構築

京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は11月22日、アルツハイマー病(AD)患者由来iPS細胞を用いた化合物スクリーニング系を構築し、ADの病因物質のひとつ「アミロイドベータ()」を減らす事ができる既存薬の組み合わせ(カクテル)を見出したと発表した。この研究は、京都大学CiRA増殖分化機構研究部門幹細胞医学分野・理化学研究所バイオリソースセンター創薬細胞基盤開発チームの近藤孝之特定拠点助教および井上治久教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Cell Reports」で公開された。

ADは、認知症の中で最も多い疾患で、遺伝子変異が原因で起こる家族性ADと、家族歴のない孤発性ADに大別される。どちらの種類も、大脳皮質の神経細胞内にAβが蓄積することが病因のひとつと考えられており、Aβは重要なADの治療標的といえる。しかし、AD患者脳内のAβ蓄積は、認知症症状が生じる20年ほど前から始まっていることが知られており、Aβを標的とする治療薬は数十年の間投与できる安全性が求められる。

研究グループは、長期間の内服に関する安全性情報が整備されている既存薬の中からAβを低減させる化合物を探索。患者由来のiPS細胞から迅速かつ大量に高純度の大脳皮質神経細胞を作製する技術を用いて、スクリーニング系の構築研究に取り組んだ。

ブロモクリプチン・・トピラマートの組み合わせでAβの低減効果

研究グループは、長期間内服に関する安全性情報が整備されている1,258種類の既存薬で構成される化合物ライブラリを用いて、スクリーニングした。その結果、細胞毒性が低く、細胞培養上清中のAβ42量を低下させる化合物を選び出した。


画像はリリースより

また、Aβ低減効果のあった化合物を分子構造式の類似性にもとづいて10種類のグループに分類。それぞれのグループから用量依存性が明確で最もAβ低減効果が強い6種類の化合物、ブロモクリプチン・シロスタゾール・クロモリン・フルバスタチン・プロブコール・トピラマートを選び出した。それぞれのAβ産生動態に与える影響を比較した結果、ブロモクリプチン・クロモリン・トピラマートの3種類の組合せ()で最もAβの低減効果が高まることが判明。このBCroTの組み合わせにおいても、用量依存性の効果が明確に見られたという。

さらに、プレセニリン1()またはアミロイドβ前駆体タンパク()に変異のある家族性AD患者、孤発性AD患者、健常者由来のiPS細胞および家族性AD患者由来の細胞の遺伝子変異を修復したiPS細胞から作製した大脳神経細胞にBCroTを添加し、Aβの産生を抑える効果を検証。その結果、個人差はあるものの、BCroTはすべての患者の大脳神経細胞でAβ42および Aβ40の産生量を30%以上低下させることが明らかになったという。

Aβを低減させる既存薬カクテルであるBCroTを構成する、ブロモクリプチン・クロモリン・トピラマートは臨床で使われている薬剤で、長期間の内服に関する安全性情報が整備されている。今回の研究で行ったiPS細胞モデルを用いた既存薬の同定によって、今後、長期間の安全性が必要なADの治療薬開発が進展することが期待される、と研究グループは述べている。

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