人間の経験と感覚に頼っていた細胞の品質管理
名古屋大学は11月20日、株式会社イノテックと同大学大学院創薬科研究科の加藤竜司准教授ら研究グループとの共同開発により、再生医療用細胞の非破壊品質管理を実現するクラウド型細胞品質管理システム「AiCELLEX」(アイセレックス)の製品化を開始したと発表した。またイノテックは、AiCELLEXの基盤技術を用いて、島根大学医学部生命科学講座の松崎有未教授が取締役を務める島根大学発ベンチャーPuREC株式会社との事業提携を行い、細胞培養における品質管理支援サービスも開始した。
細胞培養技術の進歩に伴い、細胞を使った新しい医療である再生医療や、創薬開発における医薬品の効果や安全性の研究が大きく発展しつつある。しかし、これまで、培養中の細胞の品質を生きたまま評価することは技術的に難しく、細胞の品質管理は人間の経験と感覚に基づく顕微鏡観察のスキルに頼っていた。特に再生医療において、細胞品質の管理は、治療効果と安全性に極めて重要であり、人に依存した再生医療用の細胞製造は安定性やコストの面において、実用化に重要な課題があったという。
熟練者の予測精度を超える「品質診断結果」をレポート
AiCELLEXは、細胞画像に基づく品質診断クラウド型AIシステム。ユーザーがウェブを通じて細胞画像をアップロードすると、細胞品質に深く関わることが知られている「細胞の形状」を独自の指紋情報として数値化する。この指紋情報を元に、過去の細胞画像と細胞品質(状態や活性)を蓄積したデータベースを学習したコンピュータが、熟練者の予測精度を超える「品質診断結果」をユーザーにレポート。複数の画像で検索を行えば行うほどデータベースは整理・精錬され、システムは学習によって、より高い精度で品質診断結果を返すことができるようになるという。
画像はリリースより
AiCELLEXの基盤技術を用いたサービス事業として、間葉系幹細胞から超高純度ヒト間葉系幹細胞(Rapidly Expanding Cells:REC)を取得・販売する島根大の松崎教授らの研究グループと、PuREC株式会社との事業提携を結び、実際の細胞製造現場における細胞品質管理をサポート・効率化する支援サービスの提供を開始。細胞の画像診断技術による品質管理の有効性や実用性が実証されることで、再生医療や創薬開発を支えることが期待される、と同社は述べている。
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