短期間でNASHを発症する誘導性モデルを開発
東京医科歯科大学は11月15日、短期間で非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を発症する誘導性モデルを新たに開発し、肝線維化を促進する疾患特異的マクロファージを同定したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科分子細胞代謝学分野・九州大学大学院医学研究院病態制御内科学分野の小川佳宏教授と、名古屋大学環境医学研究所分子代謝医学分野の菅波孝祥教授を中心とする研究グループによるもの。研究成果は、国際科学誌「JCI Insight」オンライン版で発表されている。
近年、日本でもNASHが急増しているが、どのようにして脂肪肝がNASHに進行するかは明らかになっていない。また、NASHの確定診断には侵襲的な肝生検が必要であり、有効な治療法も存在しないことが大きな問題となっている。さらに、ヒトNASHの病態を反映する動物モデルに乏しいことが、NASH研究の妨げとなっていた。
これまでに研究グループは、遺伝性肥満を呈するメラノコルチン4型受容体(MC4R)欠損マウスを用いて、肥満やインスリン抵抗性を背景に、脂肪肝からNASH、肝細胞がんを経時的に発症する新しいNASHモデルを開発。しかし、NASH病変の発症には20週間を要するため、詳細な病態メカニズムの解明が困難だった。
肝臓局所に特徴的な微小環境が形成
研究グループは今回、脂肪肝を発症したMC4R欠損マウスに肝障害性薬剤投与によって肝細胞死を誘導することにより、1週間の過程でNASHを発症する新たな誘導性NASHモデルを開発。NASHの発症に長期間必要な従来型モデルと組み合わせることで、脂肪肝からNASHを発症する過程を詳細に検討することが可能となったという。
その結果、NASHの発症に先行して、肝臓の局所に特徴的な微小環境(hCLS)が形成され、NASHの発症に至ることを発見。hCLSは、主に組織常在性マクロファージ(クッパー細胞)で構成され、炎症促進性の形質を獲得することにより、肝線維化に働くことが判明したとしている。
画像はリリースより
白血球の一種であるマクロファージは、従来は一様と考えられていたが、近年、臓器や疾患でそれぞれ特徴的なマクロファージサブタイプが存在し、多種多様であることがわかってきた。今回の研究で見出した新たなマクロファージサブタイプは、NASHに特異的なものだと考えられるという。さらに、同様のマクロファージサブタイプはヒトNASHでも認められ、NASHの病勢を反映することを明らかにしたとしている。
今回の研究成果により、NASHの発症機序の解明や新規バイオマーカー・治療法の開発に繋がると期待される、と研究グループは述べている。
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・東京医科歯科大学 プレスリリース