呼吸器疾患や心疾患との関連性が指摘される大気中PM
岡山大学は11月15日、大気中に浮遊している粒子状物質(PM)に含まれるタンパク質がオゾンと二酸化窒素によって化学修飾を受けていると発表した。この研究は、同大大学院医歯薬学総合研究科(医)公衆衛生学の荻野景規教授、伊藤達男助教らの研究グループによるもの。研究成果は、英科学誌「Environmental Pollution」に掲載された。
画像はリリースより
大気中におけるPMは、その大きさによっては呼吸器の深部にまで到達・沈着し、健康に悪影響を及ぼすことが報告されている。PMは、工場や自動車などからの排気、土壌など、さまざまな発生源から生じ、金属、ケイ素などの無機物、オゾンや窒素酸化物、硫黄酸化物などの成分からなるが、最近では花粉、ウイルス、真菌などからなるタンパク質を含む粒子(バイオエアロゾル粒子)も注目され、これらによるアレルギーへの影響が指摘されていた。
これまでに、アレルギーの原因となるタンパク質(アレルゲン)がオゾンや窒素酸化物によって修飾(ニトロ化)され、そのアレルギー作用が増強されることが報告されてたが、実験的に作られた環境下でのみ得られた結果だったという。
高湿度環境下でニトロ基による化学修飾受ける
今回、研究グループは、一年間の大気中のオゾン、窒素酸化物(NOx、NO2)、PM濃度、タンパク質濃度などを評価。さらに、大気中に浮遊するPMを捕集し、抽出したタンパク質サンプルからニトロチロシンを定量し、大気中の成分とニトロチロシン濃度の関連性を分析した。その結果、大気中のニトロチロシン量は、高湿度環境下においてオゾンや窒素酸化物と関連性が見られ、大気に浮遊しているタンパク質はニトロ基による化学修飾を受けていることが判明したとしている。
この研究成果は、大気環境中のPMによる健康影響を評価するための重要な知見となる。今後は、大気環境中のニトロチロシンの発生メカニズムが明らかになることで、新たなモニタリングが可能になり、環境・健康対策に寄与することが期待される、と研究グループは述べている。
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