2025年には要介護者が520万人になると推定される脳梗塞
北海道大学病院は11月10日、脳梗塞急性期患者に対する自家骨髄幹細胞直接移植の医師主導治験を4月より開始したことを発表した。この研究は、北海道大学大学院脳神経外科学分野の寳金清博教授らと、富山大学脳神経外科学分野の黒田敏教授を中心とした研究グループによるもの。
脳卒中の大部分を占める脳梗塞は、国内で年間約30万人が新たに発症し、その多くが死亡もしくは後遺症を残す。2025年には、後遺症による要介護者が520万人になると推定され、それに伴う社会的負担の増大も考えられることからも、より有効な治療法が求められている。
脳卒中の治療が困難な原因のひとつとして、一度傷害された脳神経組織を再生させる治療法が確立していないことがある。そのため治療法の主眼は、「障害を可能な限り軽度でとどめる超急性期の治療法」と「慢性期以降のリハビリによる機能回復」になる。しかし脳梗塞では、有効とされる超急性期のカテーテル治療に時間的に間に合う患者はそれほど多くない。近年はロボットを用いた新たなリハビリ方法も始まっているが、その効果も限定的で、多くの患者に後遺症が生じているのが現状だ。
これまで、同大学脳神経外科では骨髄間質細胞が脳内で生育し増殖することや、脳梗塞部に直接投与することで障害部位へ遊走し神経細胞に分化すること、栄養因子を出すことで運動機能を回復することなどを報告していた。そこで今回は、少数の患者で患者本人の骨髄間質細胞を培養増殖し、脳に直接投与する臨床研究を安全性に重点をおいて調べる治験を計画した。
1例目の患者への移植手術終了、再生医療等製品の承認目指す
画像はリリースより
今回の治験では、脳梗塞急性期患者本人の腸骨から骨髄幹細胞を取り出し、同大病院内に設置されている細胞培養室で培養増殖を行い、規定の細胞数に達した後に専用の機器を用いて脳内に直接投与。その後1年間、安全性および有効性を確認することを目的としている。また、健常なボランティアから提供を受けた血小板を用いて細胞を増殖させる細胞培養法や、脳ナビゲーションを用いた安全な移植法、移植細胞を体外から確認できるような標識法など新しい方法を用いてより安全に治験を行うことも目的としている。
目標症例数は6例で、同大病院もしくは他医療機関へ入院した脳梗塞患者が対象。発症14日目までに同大病院に転院する必要があり、その際の麻痺が比較的重度であることが参加の条件となっている。募集期間は症例数が目標の6例に達するまで。参加期間は治験への参加に最初に同意してから約1年3か月を予定しているという。
脳梗塞急性期患者を対象とした直接投与による幹細胞移植の治験は、日本で初めて。2017年8月に1例目の患者への移植手術が安全に終了しているという。今後は、治験の結果を受けて再生医療等製品としての承認を目指していきたいとしている。
▼関連リンク
・日本医療研究開発機構(AMED) プレスリリース