ブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類されるダニ媒介性感染症
愛媛大学は11月9日、抗ウイルス薬「アビガン錠(R)」(一般名:ファビピラビル)を用いた重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に対する新規薬物療法の臨床研究成果を発表した。この研究は、同大の安川正貴副学長(大学院医学系研究科・教授)が、長崎大学・河野茂学長および国立感染症研究所ウイルス第一部・西條政幸部長とともに自主研究組織を立ち上げ、行ったもの。研究成果は「第87回日本感染症学会西日本地方会学術集会・第60回日本感染症学会中日本地方会学術集会・第65回日本化学療法学会西日本支部総会」で発表された。
SFTSは、2011年に中国の研究者らによって発見されたブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新規ウイルスによるダニ媒介性感染症。日本国内においてもこれまでに300例以上が確認されている。重症例では、神経症状、出血傾向、血球貪食症候群、多臓器不全などが出現する致命率が極めて高いウイルス感染症だ。
これまでの基礎研究ならびに国立感染症研究所が実施した動物実験により、富山化学工業株式会社が創製したアビガン錠は、SFTSに有効である可能性が示されている。今回の医師主導型臨床研究は、その治療効果と安全性を調べるため、西日本の医療機関34施設が、地方衛生研究所の協力を得て、2016年5~12月に実施した。
10名中8名が回復、早期治療が重要
その結果、SFTS患者10名にファビピラビルを5~14日投与したところ、ファビピラビルによる重篤な有害事象は認められなかったという。患者10名中2名が死亡したが、8名は回復。死亡例は治療開始時の体内のウイルス量が高い傾向にあり、すでにSFTSウイルス感染による多臓器不全に至っていたことから抗ウイルス剤の治療効果が得られなかったと考えられる。そのため、SFTSの治療には、ウイルス量が高くならない時点での早期診断・早期治療が重要と考えられるという。
画像はリリースより
今回の研究により、ファビピラビル投与症例の多くは、速やかな白血球数と血小板数の回復が認められ、治療開始後の血小板の増加が予後の指標となる可能性が示唆された。また、SFTS患者におけるウイルス量の推移を測定することができた。研究を主導した安川副学長は「今回の研究により、有効な治療法の開発につながる知見を得たと考えています」と述べている。
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・愛媛大学 プレスリリース