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【医療薬学会年会】地域のAMR対策、薬局が鍵-抗菌薬適正使用で役割発揮を

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2017年11月08日 AM10:30


■医療薬学会年会で強調

地域における薬剤耐性(AMR)対策をどのように推進するか――。3~5日の3日間、千葉市で開かれた日本医療薬学会年会のシンポジウムで講演した各演者は、医師や患者の抗菌薬使用の意識を変える役割を薬局薬剤師が担う重要性を強調。薬局薬剤師は病名や処方意図が分からないために疑義照会しづらいことや、病院では届出制が導入されている抗菌薬でも在宅医療現場ではその使用に制限がないことなど、AMR対策推進に向けて解決すべき課題を提示した。

シンポジウムの演者たち

薬剤耐性菌の広がりを受けて世界的にAMR対策が重要視される中、日本でも2016年4月にAMR対策アクションプランが策定された。同プランは、病院内だけでなく地域でも広域経口抗菌薬の適正使用を推進するよう要請。こうした動きの一環として2017年6月には「抗微生物薬適正使用の手引き」がまとめられ、急性気道感染症などには原則として抗菌薬の投与を行わないよう求めている。

手引き作成に関わった医師の大曲貴夫氏(国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター)は「手引きについては批判もすごく多い。エビデンスに裏づけされた急性気道感染症診療のごく一般的なやり方を示したが、これまでにそれを習ったことがない方もたくさんおり、新たなものは認知的、感情的にだいたい拒否される。批判は予想していたが、しっかりと啓発を進めていきたい」と語った。

合併症を起こすかもしれないとしてかぜ症状に抗菌薬を処方する医師は少なくない。しかし、海外の研究によると、急性上気道炎、咽頭炎、急性中耳炎の患者4000人に抗菌薬を処方して初めて重篤な合併症の発症を1例予防できるだけにすぎないという。

大曲氏は「これは相当効率の悪い医療だと思う。また、抗菌薬の副作用は無視できない頻度で発生することも自覚しておく必要がある」と強調。医師や患者の抗菌薬使用の認識を変えるなど、今後地域のAMR対策を推進する上で「薬局薬剤師が果たす役割に、ものすごく期待している」と呼びかけた。

一方、東野愛理氏(淀川キリスト教病院薬剤部)は、大阪市東淀川区の61薬局を対象に実施した意識調査(回答率80%)の結果を報告。かぜなどで抗菌薬が明らかに不要だと思われる処方に対して「疑義照会できていないという回答が多かった」と話した。

その理由として「患者や病態や疾患名が不明であり、明らかに抗菌薬が不要であると薬剤師は判断できない」「患者の希望によって抗菌薬が処方されていることもあり、疑義照会しにくい」などの回答が寄せられた。東野氏は「病名、処方意図、体重、腎機能などの情報があれば疑義照会しやすいという回答だった」と述べ、情報共有化の環境を整備する必要性を提示した。

薬局薬剤師の立場から齊藤直裕氏(ファーコス薬局新宿)は、在宅医療現場でも注射の抗菌薬を使用できるが、▽病院では医師の処方時に届出制を導入して使用制限を設けている抗菌薬でも、在宅医療現場では制限はなく医師の裁量に委ねられている▽1日1回投与、広域スペクトラムの抗菌薬が汎用され選択肢は限られている――など特有の問題があると指摘。さらに、「在宅では熱が下がって意識が改善したり、食事が食べられるようになったりすることが重視され、血液培養はほとんど行われない。何が原因だったのかは最後まで分からないことが多い」と問題を提起した。

患者の意識について継田雅美氏(新潟薬科大学薬学部)は、大学が地域と連携して行う「健康・自立セミナー」に参加した地域住民を対象に実施したアンケート調査結果を報告した。

その結果、抗生物質や抗菌薬の服用を途中でやめたり、同様の症状が出た時に残った薬を飲んだりする患者は少なくなかったとし、「一般地域住民の認識は未だ高いとはいえない。薬剤師はこのような現状を踏まえて、普及啓発、教育活動を推進する必要がある」と投げかけた。

病院薬剤師の立場から高山和郎氏(東京大学病院薬剤部)は「地域のイベントで病院薬剤師と薬局薬剤師が連携して患者教育を行ったり、在宅医療における感染対策や感染症診療における抗菌薬の適正使用を薬局薬剤師が習得する機会を病院薬剤師が設けたりするなど、様々な切り口での連携が考えられる」と強調。地域のAMR対策を推進する上で、病院薬剤師が架け橋になり得ると語った。

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