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日本初の抗PD-L1抗体薬バベンチオは希少がんに何をもたらすか

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2017年11月08日 PM03:00

メルクセローノとファイザーがメディアセミナー開催

メルクセローノ株式会社とファイザー株式会社は9月27日、両社が共同開発を行っている抗PD-L1抗体「バベンチオ(R)点滴静注200mg」(一般名:アベルマブ(遺伝子組換え))について、「根治切除不能なメルケル細胞がん」の効能・効果で、メルクセローノが製造販売承認を取得。これを受け、両社は11月6日、メディアセミナーを開催。国立がん研究センター研究所 腫瘍免疫研究分野/先端医療開発センター 免疫トランスレーショナルリサーチ分野 分野長の西川博嘉氏、国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科科長の山﨑直也氏が講演した。


国立がん研究センター中央病院の山﨑直也氏(左)と
国立がん研究センター研究所の西川博嘉氏

メルケル細胞がん(MCC)は、皮膚表皮層の最下部に位置する神経内分泌細胞の1種であるメルケル細胞におこる希少かつ進行の早いがん。皮膚の神経内分泌腫瘍、索状がんとも呼ばれ、頭頸部や腕など日光にさらされることが多い部位の皮膚に発生する。MCCのリスク因子は、日光のばく露、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCPyV)への感染などが挙げられる。

MCCの日本国内における患者数は100人前後と考えられ、希少ながんである一方、その数は増加傾向にあるという。山﨑氏は、「国がんのような専門病院でも1年に1例あるかないか」だったというが、「今年は11月までに11例の患者さんが来院しており、ほぼ1か月に1例のペース」と語る。他の皮膚がんと誤診されていた可能性もあるため、患者自体の数が増えているのか、これまで未発見だった症例が発掘されようになったのかは、不明だという。

ADCCの関与「今後、ヒトでも検証する必要がある」(西川氏)

MCCの治療では、遠隔転移が無い場合、手術+放射線治療が行われる。これにより約50%の患者で根治可能だが、残り50%では再発を来し、転移症例の5年生存率は18%と低い。転移症例には化学療法が選択されるが、メルケル細胞がんを適応症とする薬剤は、これまでなかった。山﨑氏は、「MCCは形態が小細胞肺がんに似ていて、小細胞肺がんに効く薬が効く。そのため、小細胞肺がんの標準治療になっているシスプラチンやカルボプラチンにエトポシド、イリノテカンを『無いながらも標準治療として』使っていた」と現状を示した。

今回の承認によりバベンチオは、MCCに対する日本で初めてかつ唯一の薬剤となり、また日本初のヒト型抗PD-L1抗体薬となった。先行するがん免疫療法としては、免疫細胞側の「」に結合することで免疫抑制を阻害するニボルマブやペムブロリズマブなど抗PD-1抗体薬がある。一方、バベンチオは腫瘍細胞側の「PD-L1」に結合することでその効果を発揮する。また、in vitroでは、ADCC(抗体依存性細胞傷害)が関与しているとも考えられている。西川氏はこの点に着目しており、「ADCC活性によりNK細胞、マクロファージが直接腫瘍細胞を攻撃する可能性もある。今後、ヒトでも検証する必要があるだろう」と述べた。

抗PD-L1抗体薬は、今後も各社から登場する予定だが、西川氏は「それらが同じかどうかは、これからの研究課題であり、ヒトの検体で解析しないとわからないこと。まだ発展途上の薬だということ知ってほしい」と語り、そのうえで「免疫チェックポイント阻害薬は、がん免疫療法の中でも効果が認められており、これまで治療法のなかった希少がんや他の固形がんにも展開できるように、既存の治療薬とどのように組み合わせるのか、それとも全く違う使い方をするのがよいのかという点も含めて検討することが、今後の課題ではないか」と結んだ。(QLifePro編集部)

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