認知機能障害などが特徴の前頭側頭葉変性症
名古屋市大学は11月1日、加齢と認知症で加速する新たな神経細胞死を発見したと発表した。この研究は、同大大学院薬学研究科の築地仁美講師、服部光治教授と、名古屋大学環境医学研究所の山中宏二教授、理化学研究所、順天堂大学の研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」電子版に掲載されている。
画像はリリースより
認知症を代表とする神経変性疾患は、加齢に伴い神経細胞が死んで脱落し、脳機能が低下する。これら疾患患者の脳内でダメージを受けている神経細胞は、不要なタンパク質を処理できず、脳内に溜まっていく。例えば、アルツハイマー病ではタンパク質アミロイドβが溜まっていくことがわかっている。
前頭側頭葉変性症(FTLD)は、人格変化、反社会的行動を伴う行動障害、認知機能障害などを特徴とする神経変性疾患。認知症のなかでは、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症に次いで罹患者が多い疾患だ。近年、FTLD患者の脳の神経細胞では、タンパク質「TDP-43」が異常に溜まっていることが判明していた。しかし、TDP-43の蓄積機構や神経変性機序はよくわかっていない。
老齢マウス・FTLDマウスで抑制性介在ニューロンの細胞死が増加
研究グループはまず、TDP-43を過剰発現させたFTLDのモデルマウスを作成し、脳内で起こる異常を探索。その結果、FTLDモデルマウスでは高度にユビキチン化されたタンパクを含む微小顆粒が多数観察されたという。この微小顆粒はTDP-43をほとんど含まず、TDP-43蓄積以前に起こる初期変化だった。さらにこの微小顆粒は、神経細胞の興奮を抑える細胞の抑制性介在ニューロンが細胞死したものだと判明したという。また、これら抑制性介在ニューロンの“死骸”は若齢マウスでは見られず、老齢マウスの脳内で顕著に増加。FTLDモデルマウスの脳内では、さらに増加したという。
これにより、FTLDの発症機構に抑制性介在ニューロンの細胞死が関与する可能性が示唆された。加齢に伴う抑制性介在ニューロン死は、加齢や認知症の初期症状として、神経の過興奮が起こることを説明できる可能があるという。この現象を抑えることができれば、脳のアンチエイジングや加齢に伴う神経疾患の治療法につながることが期待できる、と研究グループは述べている。
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・名古屋市立大学 プレスリリース