医療機器としては国内初「患者申出療養制度」で実施
大阪大学は10月30日、心臓移植やDestination Therapy治験(DT治験)の対象とならない患者に対して、2017年3月に日本初となる耳介後部ケーブルを用いた新しい補助人工心臓の装着を行い、これに成功し、無事自宅退院となることを発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科心臓血管外科の澤芳樹教授らの研究グループによるもの。
画像はリリースより
大阪大学医学部附属病院は、末期心不全で移植適応とならない患者からの申出により実施されている「患者申出療養制度」で、医療機器としては国内初となる承認を2017年2月20日に受けた。この患者申出療養制度は、保険外併用療法として、未承認薬等を迅速に使用したいと望む患者の思いに応えるために、新たに創設された制度。そのため、同制度は患者からの申出が起点となる。
これまで、日本においては心臓移植の登録までの橋渡しとしての補助人工心臓の使用のみ保険適応とされ、それ以外は認められていなかった。今回、患者からの申出によって、同制度を利用することで従来の適応外である患者に対して補助人工心臓の装着による救命とともに、海外承認、国内未承認の技術である耳介後部からケーブルを出す新しい補助人工心臓を使用することが可能になったという。
腹部ケーブルと比べ、ケーブル由来感染症のリスク低く
心臓移植・DT治験の対象外となる患者に対して補助人工心臓の装着が可能となるこの療法は、補助人工心臓治療という新しい選択肢を提供することが可能となる。また、この新しい耳介後部型の補助人工心臓は、現在承認されている腹部ケーブルを使用する療法と比べて、ケーブル由来感染症のリスクが低く、管理が容易となる。さらに、入浴が可能など装着患者のQOLが向上する点からも実生活に大きな影響を与えることが期待されるという。
今後は、日本人における耳介後部型補助人工心臓の有用性を明らかにすることで、国内承認を目指し、多くの重症心不全患者のQOL向上に寄与したいと研究グループは述べている。
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