医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 軽度認知障害者、顔の短期記憶力が低下し視線布置が健常者と異なる可能性-熊本大

軽度認知障害者、顔の短期記憶力が低下し視線布置が健常者と異なる可能性-熊本大

読了時間:約 1分13秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2017年11月02日 PM12:15

日常生活に支障を及ぼさないレベルで認知機能が低下するMCI

熊本大学は10月31日、軽度認知障害の高齢者は、健常高齢者に比べてヒトの顔を短期的に記憶する能力が低下しており、顔を記憶する時の視線行動に異変が生じていることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院社会文化科学研究科の川越敏和大学院生と文学部の積山薫教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」に掲載されている。

アルツハイマー型認知症は認知症の中で最も多いとされ、その予備群を高頻度に含むと考えられる軽度認知障害()は、日常生活には支障を及ぼさないレベルで記憶などの認知機能が低下する状態だ。

MCI者は、ヒトの顔を視覚的に処理する領域が構造・機能的に変容していることが、脳画像研究によって示されている。先行研究より、MCI者は顔の記憶力が低下するという報告はあるものの、顔以外の他の刺激に対する記憶との比較がなされていないなどの問題があった。

MCI者の記憶成績、顔の画像が家の画像よりも低下

研究グループは、各18名の高齢の健常者とMCI者に対する比較実験を実施。2種類の画像(初めて見る顔や家の画像)を覚えようとしているときの視線の動向を記録し、視覚的再認課題を被験者におこなった。その結果、健常者は顔と家の画像間の記憶成績に差がなかったが、MCI者の記憶成績は顔の画像が家の画像よりも低下していることが判明。また記憶時の視線行動は、健常者に比べてMCI者で目元への視線の集中が減り、口元への視線が増えるというパターンが確認されたという。

今回の研究成果により、MCI者では顔の短期記憶力が低下し、視線布置が健常者と異なる可能性が示された。目元を見ることは、顔を全体的に覚えるために重要だという。MCI者では、脳機能の低下によって顔の認知処理過程に異常が生じており、それを補うために分散的な視線布置を行っていると考えられる、と研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 前立腺がん、治療決定時SDMが患者の治療後「後悔」低減に関連-北大
  • 糖尿病管理に有効な「唾液グリコアルブミン検査法」を確立-東大病院ほか
  • 3年後の牛乳アレルギー耐性獲得率を予測するモデルを開発-成育医療センター
  • 小児急性リンパ性白血病の標準治療確立、臨床試験で最高水準の生存率-東大ほか
  • HPSの人はストレスを感じやすいが、周囲と「協調」して仕事ができると判明-阪大