顔・色を認識する部分とその周辺脳の機能関連
旭川医科大学は10月31日、詳細なてんかん病巣診断、治療計画を行う過程で「顔」「色」を認識する部分とその周辺脳の機能関連を発見したと発表した。この研究は、同大脳神経外科学講座の鎌田恭輔教授のグループによるもの。研究成果は「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」に掲載されている。
画像はリリースより
これまでのてんかん外科治療では、診断目的のため頭蓋内に留置した電極から、てんかん焦点の活動検出、さらに脳を電気刺激して機能を抑制し、脳の機能局在地図を作成していた。顔、色、文字などの視覚認知関連領域は頭蓋底部近傍に存在しているが、電気皮質刺激は痛みがあり詳細に検討ができなかったため、これらの機能を十分に局在しながら外科手術をすることは不可能だったという。
ひとつの視覚認知過程でも、さまざまな脳部位との関連性が
研究グループは、顔、色、物品などで視覚を刺激しながら、脳皮質の電気的活動を計測・処理することで、顔、色、物品を認識する脳部位を同定。その部分と顔・色領域を微小電流で限局的に刺激すると、顔以外の物品を見た時にも、目、鼻などの顔の部分が視界に現れ、また色認知領域を刺激すると、視野内に虹色が常に現れていたという。
てんかんの原因部位は、側頭葉が好発部位であることが多く、外科手術により視覚認知機能障害が合併症として起きることがあるが、てんかん発作開始領域と視覚機能地図を精密に作成できるようになったことで、より確実かつ安全な外科治療を行うことが可能となる。また、物を見るというひとつの視覚認知過程においても、さまざまな脳部位との関連性があることを証明したとしている。
この方法は、視覚認知機能のみならず、幻視、幻聴などの幻覚の要因を突き止め、将来的には外科治療において記憶機能を捉えていく可能性がある。顔、色、物品などの複数の視覚刺激を認知するにも、記憶機能を含めてさまざまな脳内部位の機能的な連合が必要であると考えられるため、複雑な脳機能を確実に明らかにすることで、安全かつ確実なてんかん外科治療の確立を目指す、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・旭川医科大学 プレスリリース