遺伝要因と環境要因の両方が発症にかかわる「多因子疾患」
岡山大学は10月27日、目の病気の一つである「斜視」について、その発症に関連する遺伝子候補として2つの遺伝子「MGST2」と「WNT2」を世界に先駆けて明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯薬学総合研究科(医)眼科学分野の松尾俊彦准教授らの研究グループによるもの。研究成果は「PeerJ」に掲載されている。
斜視は、視線の方向によって斜視角が変わらない「共同性斜視」と、視線の方向によって斜視の程度が変わる「麻痺性(非共同性)斜視」の2種類に大きく分類される。共同性斜視には内斜視、外斜視、上下斜視があり、さらに内斜視にはさまざまな病型があるなど、斜視の症状や所見は多彩だ。
研究グループは、2000年以降さまざまな臨床研究を実施し、斜視の発症には遺伝の要因が関与していることを明らかにしている。また、これまでの臨床研究において、小学生の約1%に内斜視や外斜視があり頻度が高いこと、斜視患者では家族歴の頻度が高いこと、一卵性双生児は、二卵性双生児と比べて斜視の表現型の一致率が高いことを証明してきた。
米ロックフェラー大学のオット名誉教授の助言を得て
斜視の子どもから提供された血液の白血球からゲノムDNAを抽出して、斜視の発症がどの染色体の部位(座位)と関連するかを調べ、2009年には斜視の発症に関連する遺伝子座を初めて明らかにした。斜視に関連する遺伝子座を発見した研究は、遺伝統計学を専門とする米ロックフェラー大学のユルク・オット名誉教授と共同で実施。今回の研究でも、オット名誉教授の助言を得て、4番染色体の4q28.3領域ではMGST2、7番染色体の7q31.2領域ではWNT2を斜視関連遺伝子として特定したという。
斜視関連遺伝子の解明は、多彩な表現型をもつ斜視の診断精度向上と、両眼をうまく使う機能「両眼視機能」の解明につながると期待される。今回の遺伝子候補の発見によって、今後の斜視に関する研究が加速することが予測される、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・岡山大学 プレスリリース