株式会社ファンケルと共同研究
九州大学は10月26日、アミノ酸の一種であるL-セリンを摂取すると、光による体内時計の“針合わせ”が強められることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院農学研究院の安尾しのぶ准教授と芸術工学研究院の樋口重和教授が、株式会社ファンケルと共同で行ったもの。同研究成果は、「Journal of Nutrition」に掲載されている。
画像はリリースより
人の体には約24時間で刻まれる体内時計が備わっており、睡眠・覚醒状態やホルモン分泌・血圧などの生理活動が地球上の昼夜リズムに合うように制御している。しかし、現代社会では不規則な生活や頻繁な時差ぼけ、夜間にパソコンやスマートフォンの光を見続けるなどの生活に陥りやすく、体内時計が乱れがちだ。体内時計が乱れると、がんや糖尿病、高血圧、肥満などのリスクが高まる可能性も指摘されている。人の体内時計はもともと24時間より長いため、朝の光を浴びることで毎日“針合わせ”がおこなわれるが、頻繁に生活リズムが狂うと、この針合わせが追いつかなくなるという。
「L-セリン+光」でメラトニンの分泌開始時刻が大きく前進
今回、研究グループは、マウスを用いた実験により、20種類のアミノ酸のうちL-セリンを摂取すると、体内時計の光による針合わせが強められることを発見。また、昼夜リズムを6時間ずらして人工的な時差ぼけを誘導した上で、L-セリンを決まった時間に摂取すると、体内時計の針が早く進み、新しいリズムに早く同調したという。さらに、男子大学生に夜L-セリンを摂取させ朝に光を照射した結果、体内時計の針を示すメラトニンの分泌開始時刻が大きく前進した。このことから、人でもL-セリンで体内時計の針合わせが強められることを実証したとしている。
これらの研究成果から、栄養学的に体内時計の乱れや時差ぼけを改善できることが期待されるという。海外旅行の際に生じる時差ぼけや、週末に3時間以上朝寝坊することで生じる「社会的時差ぼけ」の改善、シフトワーカーの健康管理、生活リズムの乱れによる不眠の改善、つい夜ふかししてしまった際の体内時計の修正など、広い範囲での応用が考えられる、と研究グループは述べている。
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・九州大学 研究成果