心血管系で細胞増殖などに関与することが報告されているカテプシンK
名古屋大学は10月24日、骨格筋再生・修復におけるcathepsin K(カテプシンK)の役割とその機序を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科地域在宅医療学・老年科学の小笠原真雄大学院生、同大未来社会創造機構モビリティ部門人間・加齢特性グループの成憲武特任准教授らの研究チームによるもの。研究成果は「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」に掲載されている。
画像はリリースより
カテプシンKは、リソソームでスカベンジャーとして働くシステイン・プロテアーゼのひとつ。これまで、心血管系では、カテプシンKが細胞増殖、線維化と組織リモデリングへ関与することが報告されているが、骨格筋におけるカテプシンKの役割は明らかになっていない。
また、加齢による骨格筋疾患(サルコペニア)は、骨格筋タンパクの合成と分解のアンバランスや筋肉修復機能低下などが生じることより発症すると考えられているが、その詳細に関して不明な点が多い。サルコペニアには、骨格筋障害を伴っていることがあり、治療にはプロテアーゼ介入へのアプローチが必要だ。
カテプシンK活性抑制により骨格筋のリモデリングなど示す
研究グループは、筋障害後の骨格筋細胞アポトーシスと炎症反応におけるカテプシンKの役割に着目し、ヘビ毒による骨格筋障害モデルを用いて機序解明を目指した。カテプシンK遺伝子欠損あるいは選択的なカテプシンK阻害剤投与が、骨格筋障害モデルにおいて、骨格筋保護効果を果たすかを検討したところ、カテプシンK活性の抑制が、骨格筋アポトーシスならびに炎症を抑制することを介して、骨格筋のリモデリングや線維化の抑制を示すことを世界で初めて明らかにしたという。
今回の研究成果により、サルコペニアやフレイルへの新たな治療戦略として、カテプシンKを新たな標的とした治療の開発が進むことが期待される、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・名古屋大学 プレスリリース