多くの症例で機械的循環補助が必要な急性心不全
大阪大学は10月23日、経皮的補助人工心臓を用いた急性心不全の治療に国内で初めて成功したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科(心臓血管外科)の澤芳樹教授らの研究グループによるものである。
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薬物療法抵抗性の心原性ショック等による急性心不全は、治療が非常に困難で、多くの症例で機械的循環補助が必要になる。これまでの機械的循環補助として、大動脈バルーンポンピング、経皮的心肺補助装置が挙げられるが、これらの装置は圧補助、逆行性送血など循環補助の方法に問題点がある。そのため、十分な血行動態の改善と心筋の負荷軽減をできない場合がある。また、流量補助、順行性送血が可能で、多くの症例で十分な循環補助が期待できる体外式/埋込式補助人工心臓は、侵襲性の強い外科的手技が必要で、心原性ショックに陥った急性期では、その侵襲に耐えられない症例があるなどの問題点があった。
低侵襲に血行動態の改善などを目指せる「IMPELLA」を用いて
今回、治療に用いられた「IMPELLA(インペラ)」は、左心室から大動脈へ直接血液を送り出す経皮的補助人工心臓。低侵襲に血行動態の改善と心筋の負荷軽減を目指すことが可能だという。開胸手術をせず、経皮的/経血管的にポンプカテーテルを挿入し、ポンプ内のインペラ(羽根車)を高速回転することで、左心室内に挿入・留置したポンプカテーテル先端の吸入部から血液を吸引。上行大動脈に位置した吐出部から送り出すことで、順行性の血液体循環の補助を行うという。
研究グループは10月2日、50歳代の男性の症例で、薬物療法抵抗性の心原性ショック等による急性心不全に対して、国内で初めてIMPELLAを使用した治療を行い、血行動態の著明な改善を確認したという。IMPELLAの使用は安全に行われ、十分な治療効果を示したとしている。
今後、このテクノロジーが国内で適正に普及することにより、急性心不全患者の救命率や治療成績の向上が期待される、と研究グループは述べている。