皮膚炎や骨密度の低下につながる生体内の亜鉛欠乏
徳島文理大学は10月24日、生体内の亜鉛が皮膚の毛包と表皮の形成に重要であることを、マウスと培養細胞を用いた研究から明らかにしたと発表した。これは、同大薬学部の深田俊幸教授(昭和大学歯学部兼任講師・理化学研究所客員研究員)、昭和大学歯学部の美島健二教授ら共同研究グループによるもの。同成果は、「米国科学アカデミー紀要」電子版に10月23日付で掲載されている。
画像はリリースより
亜鉛は、生命活動に必要な微量元素のひとつ。生体内の亜鉛は、皮膚・骨・筋肉に多く存在している。何らかの原因で生体内の亜鉛量が減少すると、皮膚炎や骨密度の低下などの症状が現れる「亜鉛欠乏症」になる。とくに、皮膚表皮の脆弱化や脱毛は亜鉛の欠乏によって現れやすい症状として知られており、これらの組織の形成や維持に亜鉛が重要な役割を果たしていると考えられている。しかし、毛や皮膚の形作りに重要とされる毛包や表皮を形成する細胞での亜鉛の働きは十分に解明されていなかった。
ZIP10の欠損で転写因子「p63」の活性が低下
研究グループは、皮膚の毛包に発現する亜鉛トランスポーターの「ZIP10」に注目。マウスと培養細胞を用いた実験を行ったところ、ZIP10が欠損すると表皮の形成が著しく阻害され、皮膚バリア機能が失われることが判明した。また、毛包の形成も阻害されて、ZIP10の欠損が毛の形成にも支障をきたすこともわかったという。さらに、毛や表皮などの上皮性組織の形作りに重要な転写因子「p63」の活性がZIP10の欠損によって低下することが判明。これにより、ZIP10が輸送する亜鉛がp63の活性制御に関与していることが明らかになったとしている。
超高齢社会を迎えた日本のような先進国では、加齢による表皮や毛髪の衰えは、審美的な加えて、健康維持の観点からも大きな関心を集めている。今後の研究により、ZIP10の詳細なメカニズムや、ZIP10の機能を制御する化合物が解明されれば、老化による毛や皮膚の変化への対策や、皮膚炎や脱毛症などの治療法開発に繋がることが期待される、と研究グループは述べている。
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