骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病に移行するケースも
ノバルティスファーマ株式会社は10月16日、「再生不良性貧血のメディカルニーズに対応する″輸血フリー″実現に向けた最新治療戦略」と題したメディアセミナーを開催。「再生不良性貧血の病態と最新の治療」をテーマに、金沢大学医薬保健研究域医学系血液・呼吸器内科教授の中尾眞二氏が講演した。
金沢大学医薬保健研究域医学系
血液・呼吸器内科教授の中尾眞二氏
再生不良性貧血は、骨髄にある造血幹細胞が減少することで、汎血球が減少する疾患。再生不良性貧血のほとんどは特発性再生不良性貧血であり、その多くは免疫の異常によって起きる。指定難病であり、国内における患者数は2013年時点で約1万4,000人と推定されている。男女ともに10~20代と70~80代に発症のピークがある。
主な症状は、息切れ、動機、めまいなどの貧血症状と皮下出血斑、鼻出血や歯肉出血といった出血傾向が挙げられる。しかし、自覚症状がないことも多く、進行すると骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病に移行するケースもみられる。
治療には、免疫抑制療法や造血幹細胞移植などの造血回復を目指した治療と、輸血などの支持療法がある。非重症例では放置すると免疫抑制療法が効きにくくなり、また、重症例では治療が遅れると造血細胞が枯渇して回復が遅れるか不完全になるため、非重症例、重症例ともに早期診断・早期治療が重要だ。
エルトロンボパグ オラミンがもたらす3つのインパクト
2017年8月、ノバルティスファーマはトロンボポエチン受容体作動薬「レボレード(R)」(一般名:エルトロンボパグ オラミン)の再生不良性貧血に対する適応追加の承認を取得。免疫抑制剤「ネオーラル(R)」(一般名:シクロスポリン)の非重症の再生不良性貧血に対する承認も取得した。
シクロスポリンは2000年3月に重症の患者の治療薬として承認され、今回、軽症や中等度の患者にも適応が拡大された。このことで、非重症例に対して早期の治療ができ、輸血が必要となる前に多くの例が改善・治癒すると考えられる。さらに難治例が減る結果、不幸な転帰をとる例も減り、医療費も削減されることが予想されるという。一方、既存療法で効果不十分な場合の治療選択肢に加わったエルトロンボパグ オラミンは従来の免疫抑制剤とは異なり、未分化な造血細胞に作用して造血を促進させるという新しい作用機序を持つ治療薬だ。
中尾氏によると、エルトロンボパグ オラミン登場には3つのインパクトがあるという。1つ目は、これまで定期的な輸血を行っていた難治性再生不良性貧血患者の約50%が輸血不要となる可能性が、治療試験成績から期待されること。2つ目は、治療関連死亡率の高い骨髄バンクドナーからの造血幹細胞移植や臍帯血移植が必要と考えられていた患者が、かなりの例で移植不要になる可能性があること。そして3つ目に、治療が奏功した例の一部では治癒が得られること、すなわち治療が不要になる可能性があるという点だ。
中尾氏は「重症であっても抗胸腺細胞グロブリン(ATG)やネオーラルなどの免疫抑制療法によって約60%が回復するが、この奏効率はレボレードの併用によって大きく向上する可能性がある」と期待を寄せた。
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・ノバルティスファーマ株式会社 プレスリリース