2016年末に中国で家禽から検出
東京大学は10月18日、中国で発生した高病原性H7N9鳥インフルエンザウイルスの性状を明らかにしたと発表した。この研究は、同大学医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野の河岡義裕教授らの研究グループによるもの。研究成果は「CellHost& Microbe」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
2013年に低病原性H7N9鳥インフルエンザウイルスのヒト感染例が中国で確認されて以来、高い死亡率を伴うヒト感染例が中国を中心に毎年報告されている。国連食糧農業機関(FAO)によれば、2017年9月20日時点で1,589例の感染者が確認され、そのうち616名が死亡している。一方、2016年末には低病原性H7N9鳥ウイルスの変異によって生まれた高病原性H7N9鳥ウイルスが中国で家禽から検出された。2017年2月には、世界保健機関(WHO)は、中国で高病原性H7N9鳥インフルエンザウイルスの感染者が2名発生したと発表していた。
家禽に対して致死的な全身感染を引き起こす高病原性鳥ウイルスは、低病原性鳥ウイルスと比べて哺乳類に対する病原性も高いことが知られている。しかし、高病原性H7N9鳥ウイルスが哺乳類に対してどのような病原性を持っているのか、また哺乳類から哺乳類に伝播する能力を持っているのかは明らかになっていなかった。
ノイラミニダーゼ阻害剤に対する感受性低く
研究グループは、中国の患者から分離された高病原性H7N9鳥ウイルスに関する性状解析を実施。その結果、高病原性H7N9鳥ウイルスは、哺乳類で効率よく増殖できること、フェレットの間で飛沫感染する能力を持つこと、フェレットに対して致死的な感染を引き起こすことが明らかになったという。さらに、このウイルスは、伝播によって感染したフェレットを死に至らしめることもわかった。一方で、低病原性H7N9鳥ウイルスを感染させたフェレットは、一匹も死ななかったという。このことは、体内に入ったウイルスが少量の場合でも、フェレットが重症化して死に至ることを示している。
また、既存の抗インフルエンザ薬に対する感受性を調べたところ、高病原性H7N9鳥ウイルスは、ノイラミニダーゼ阻害剤のオセルタミビル、ザナミビル、ラニナミビルに対する感受性が比較的低いことが、マウスを用いた実験で判明。それに対して、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼ活性を阻害する薬剤のファビピラビルは、ウイルスの増殖を抑制したという。
高病原性H7N9鳥ウイルスによるパンデミックが起これば、甚大な健康被害をもたらす可能性が高いと予想される。今回の研究成果は、将来のパンデミック出現予測や感染拡大阻止に役立つだけでなく、高病原性H7N9鳥ウイルスに対するワクチンの備蓄・製造方針の決定など、今後のインフルエンザ・パンデミック対策計画を策定・実施する上で重要な情報になる、と研究グループは述べている。
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