■マッチングの円滑化に期待
漢方薬原料となる生薬をめぐっては、日本産はわずか約10%にとどまるなど、多くを中国など海外からの調達に依存する。こうした状況を受け、日漢協、厚生労働省、農林水産省が実需者と生産者をマッチングする「薬用作物の産地化に向けたブロック会議」を2013年から実施し、2016年から全国農業改良普及支援協会と日漢協が設立した薬用作物産地支援協議会が地域相談会として引き継いだ。
この4年間で363団体・個人からの要望票を受け取り、108件が折衝を開始し、36件でマッチングが成立、9件が折衝中となっている。折衝が成立、不成立になったポイントの一つは「価格」で、マッチングが成立した36件のうち、17件で折衝中止となったが、「価格や支払い条件が合意できない」という理由が最も多く挙がった。
日漢協では産地側と実需側の需給情報の交換と共有が必要と判断。そこで7月に、日漢協加盟会社を対象に「日本産と中国産生薬の購入価格」と「日本産生薬の生産希望品目」に関する調査を行い、06年と16年を調査対象年に44社から回答を得た。
その結果、322品目における1kg当たりの平均購入価格は、中国産が06年から16年に約2.3倍に高騰していたのに対し、日本産は約1.2倍と生薬調達に当たっては依然として中国産に価格優位性があるものの、その価格差は縮小傾向にあった。
使用量上位の各品目で最も高い取引価格を見ると、シャクヤクが中国産1300円、日本産2400円、トウキが中国産1400円、日本産1800円となった一方、ニンジンは中国産が1万8000円と日本産の1万5500円より高かった。中国産との価格・品質が同等であることを条件に、「日本産で購入したい」「日本産をさらに増やしたい」とする品目はニンジン、トウキ、シャクヤク、センキュウの順で多かった。購入実績のないものではカンゾウとジオウが人気だった。
17日にさいたま市で開催された関東ブロックの地域相談会では出席者は51人と前回よりも少なかったが、雰囲気が一変。これまでは「何を栽培したらいいのか」「いくらで売れるのか」という初歩的な質問内容が多かったが、各品目で具体的な取引価格が出たことで、品目を絞ってより密度の高い相談が行えるようになったようだ。
今後は薬用作物栽培の担い手となる人材育成が課題。農水省では2018年度の薬用作物支援関連対策として16億5400万円の概算要求を行っているが、全国的な支援体制整備に向け、新たに栽培を指導する技術アドバイザーの派遣を検討中。生産体制強化に向けては、医薬基盤・健康・栄養研究所薬用植物資源研究センターが中心となって、どの地域でどの生薬を栽培するのが適しているかを地図上で示す「適地マッピング」などの研究が進行しているという。