■安全で有効な薬物療法に貢献
山口県の岩国薬剤師会では、緑内障や腎機能が低下した患者のお薬手帳に、薬剤の投与制限がかかっているかどうかなどの情報を記載したカバーを取り付けて医師と薬剤師が情報共有できるようにし、適切な薬物療法につなげる取り組みを2017年4月から始めた。慢性疾患患者では、お薬手帳の持参率が高く、情報共有の媒体として有効だという。既に導入から半年が経過したが、「入院時の持参薬チェックがスムーズになった」などの声が上がっている。導入に携わった国立病院機構岩国医療センター薬剤部の尾崎誠一氏は、「安全で有効な薬物療法の提供に有効なツールになる」としている。
緑内障の治療では、眼圧を下げることが第一となるため、眼圧を上げる恐れのある抗コリン薬などは禁忌とされているほか、花粉症や感冒薬、咳止め、消化器系の薬にも禁忌とされているものが存在する。腎機能低下時にも、原則禁忌であったり、用法・用量の調整が必要な薬剤は多いのが現状だ。
ただ、添付文書上、緑内障禁忌になっていても、開放隅角緑内障や術後の閉塞隅角緑内障であれば薬剤の制限は基本的になくなるとされており、禁忌について神経質になりすぎてしまうと、適切な薬物療法の妨げになってしまうこともある。
岩国薬剤師会では、緑内障や腎機能低下時にも「使える薬剤は適切に使ってもらいたい」と考え、医師と薬剤師がしっかり情報共有できる仕組みを検討。市内の医師らの協力を得て、お薬手帳に薬物療法の最適化に必要な情報を記載したカバーを取り付けることを思いついた。
地域によっては、「緑内障カード」を作成し、医師と薬剤師が情報共有する取り組みを行っているところもあり、当初は、「カードの作成も考えた」という。しかし、患者が医師や薬剤師に提示し忘れるなどして、情報が伝わらないケースも散見されるため、慢性疾患患者の多くが持参するお薬手帳を情報共有の媒体として用いることとした。
まず、目に入るのが、処方医と薬剤師に向けた「目の病状」「腎機能」に対する注意喚起だ。手帳を開くと、緑内障患者の場合、▽かかりつけの眼科名▽緑内障の病状▽薬物療法の制限の有無▽注意が必要な薬剤一覧――などの情報が記載してあり、クレアチニン・クリアランスないし推算糸球体濾過量が60を下回るなど、腎機能が低下している患者には、注意が必要な薬剤がアイウエオ順で例示されている。
現在、お薬手帳カバー導入の効果を検証するため、医師、薬剤師、患者を対象としたアンケート調査を実施しているところだが、尾崎氏は、入院時に患者の持参薬を鑑別する際、薬物療法に制限がかかっているかどうかの報告を迅速に医師に伝えることができ、「スムーズな入院・治療につながっている」ことを実感している。
薬局からも、「カバーが付いていると、調剤時に確認できるので役立っている」との声も上がっているようだ。
今後、岩国薬剤師会としては、会員の薬局に積極的な活用を促していきたいとしている。