厚労省は、欧米で医薬品や医療機器などの研究開発型ベンチャー企業が製品化の成果を上げている一方、国内では優れた基礎研究やものづくり技術が十分に活用されていない現状に問題意識を持ち、こうした状況を打開するため、今回アカデミアなどのシーズの実用化を促し、ベンチャー企業を育てる好循環を生み出すことを目的に大手企業や研究機関などとベンチャー企業のマッチングを図るイベントを開いた。
シンポジウムでは、厚労省、医薬品医療機器総合機構(PMDA)など行政側から、革新的医薬品を対象とした早期承認制度やベンチャー企業からの要望に応じて適切な人材を紹介し、アドバイスなどを行う「ベンチャートータルサポート事業」などのベンチャー企業を支援する取り組みが紹介された。その上で、パネルディスカッションでは、ベンチャー企業のエコシステム構築をテーマに議論を行った。
ナノキャリアの中冨一郎社長は、「ベンチャーとアカデミアのトップが議論する場が必要。また、外国人を受け入れていないケースも非常に多く、経験値がある人たちの流動性がなさすぎる。留学経験者をもっと活用することも重要」と人材育成を課題に指摘した。
これに対し、厚労省医政局の飯村康夫ベンチャー等支援戦略室長は、「厚労省もベンチャーの人材育成という面では弱いと感じている」と同意。トータルサポート事業において、企業OBなどを人材バンク化すると共に、ベンチャー企業へのリクルート活動にも活用できるような仕組みを構築していく考えを示した。
ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の楠淳イノベーションディレクターは、「研究者は非常に良い研究をしているが、生かされていない。情報を得ることを目的とした交流の場の提供、サポート事業を通して適切なアドバイスをすれば、研究の質がかなり向上すると思う」との考えを提示。
厚労省に対し、「好循環を作るためには、製薬企業との強いコネクションを生かし、現役の研究者、経営者がアカデミアに出向いて実際に現場が何を求めているのかを具体的にアドバイスするシステムを主導的に実施してもらいたい」と注文を付けた。