亜鉛不足がフレイルへの悪循環を引き起こす
ノーベルファーマ株式会社は10月4日、「食欲の秋に考える味覚異常や食欲不振からおこる負の連鎖-亜鉛不足から始まるフレイルへの道-」と題したプレスセミナーを開催。マイシティクリニック(新宿)院長の平澤精一氏と兵庫医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科講師の任智美氏が講演した。
兵庫医科大学の任智美氏(右)と
マイシティクリニック(新宿)院長の平澤精一氏
フレイルとは、高齢者の身体機能や認知機能が低下して虚弱になった状態で、放置すると要介護につながる恐れがあるため、“要介護予備軍”とも言える。亜鉛は、人体に必要な5大栄養素のひとつであるミネラルで、細胞代謝を促進するため全身の各臓器や細胞に必要不可欠な栄養素。亜鉛が不足すると疲れがちで精神的に不安定になり、脱毛や皮膚障害により見た目も老けた印象が強くなる。さらに外見を気にして気が滅入り外出を避けるようになると社会との接触の機会が減ることから「個食」「孤食」が増えるという。身体面では、筋力が低下し、精神面ではうつ傾向に。このようなフレイルへの悪循環に亜鉛不足により陥る可能性がある。
現代の食生活・生活習慣の問題点として加工食品を日常的に多く摂取していることや、食材自体が貧弱化していることから、通常の食生活では亜鉛を必要量摂取しづらくなっている。なお亜鉛の1日の必要量は、成人男性で10mg、成人女性で8mg、妊婦は10mg、授乳婦は11mg。
筋肉や骨を作るテストステロンの生成に亜鉛が関与
平澤氏は亜鉛不足が更年期の男性にもたらす疾患のひとつとしてLOH症候群(Late-Onset Hypogonadism;加齢男性性腺機能低下)を挙げた。亜鉛は男性ホルモン(テストステロン)の生成に関与しており、亜鉛の不足とテストステロンの値の低下は関連性が高い。筋肉を作ったり骨を作ったりする作用があるテストステロンは、男女ともに加齢に応じて低下、筋肉量が低下するサルコペニアや運動器が弱くなるロコモティブシンドロームを引き起こす。そこで平澤氏は「更年期以降の男性だけでなく、女性も意識して亜鉛を摂取したほうがよい」と話す。
味覚障害になるとフレイルになりやすいことから、各論として「高齢者の味覚障害」をテーマに、任氏が講演。日本口腔咽頭科学会の「味覚障害患者数と味覚障害診療に関するアンケート調査」によると、味覚障害の年平均患者数はおよそ24万人。任氏が所属する兵庫医科大学を受診する患者は50~70代が中心で、低亜鉛血症の適応を持つノベルジンを用いた亜鉛内服療法を行っているという。
今までおいしく食べていた自分が作ったものを「まずい」と感じるようになったり、台所で塩をなめてみたら塩味がわからなかったりしたら味覚障害を疑ってみることや、自分でも小さじに砂糖を入れて調べてみるというセルフチェックも大切だ。「味覚障害の原因のおよそ3割を占める突発性・亜鉛欠乏症の治療による改善率は、65歳未満と65歳以上でほとんど変わらない。そこで『味覚の変化は年齢のせい』と諦めずに対処することが大切です」と任氏は話した。
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