日本製薬団体連合会の多田正世会長(大日本住友製薬社長)は、費用対効果評価によって新薬の価値評価が損なわれないことの重要性を強調。「費用対効果評価は、あくまでも現行の薬価制度を補足するものとして限定的にすべき」とし、薬価の調整範囲については、「加算率の補正に限定すべき」との考えを強調。薬価算定で一定率以上の加算が適用され、かつピーク時売上高が一定額以上と予測される品目を対象に、加算率の補正に限定して用いるよう訴えた。
PhRMAのパトリック・ジョンソン在日執行委員会委員長(日本イーライリリー社長)も、現行薬価制度との整合性を損なう形で費用対効果評価を導入することに反対姿勢を表明。慎重かつ限定的な導入を求めた上で、「価格調整については加算の範囲に限定すべき」と主張した。
EFPIAのハイケ・プリンツ理事(バイエル薬品社長)も、「価格調整は加算の範囲に限定すべき」と同調。製薬3団体は、揃って費用対効果評価は加算率の補正にとどめるべきと主張した。
業界団体の主張に対し、診療側の万代恭嗣委員(日本病院会副会長)は、「価値評価に様々な意味を含めるならば、費用対効果評価を加算に限定するのは納得しにくい。全体として費用対効果評価を考えていくことがいいのではないか」と異論を唱えた。
支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、「業界の主張は理解するが、薬価制度の抜本改革に向けた基本方針では、新薬創出等加算をゼロベースで見直すことと合わせ、費用対効果評価を本格導入することになっていたはずだ。薬価制度の補足的な位置づけという議論をしているわけではない」と主張。幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「薬価収載された薬の価格は、改定後に実勢価が変わってくるので、その薬に加算分という概念はない」との考えを示した。
これに対し、多田氏は「そもそも市場実勢価が本当に薬の価値なのか。日本は薬価引き下げを前提とした特殊な市場であり、世界に通じる市場価格ではない。そこに西欧などの費用対効果評価を持ち込むことに無理がある」と反論。「イノベーション評価が現行の薬価制度で十分に評価されているかと言えばそうではない。費用対効果評価は、それを見直せる機会」との考えを強調した。