CEAが早期大腸がん患者を発見できる確率は4割弱
医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN)は10月10日、従来の腫瘍マーカーの精度を大きく上回る新しい大腸がん早期診断バイオマーカータンパク質を発見したと発表した。この研究は、同研究所プロテオームリサーチプロジェクト・創薬標的プロテオミクスプロジェクトの朝長毅プロジェクトリーダーと白水崇研究員らの研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」に掲載されている。
近年、大腸がんの罹患者数は増加傾向であり、2017年の部位別罹患者数が国内で最も多い結果となった。しかし、現在の大腸がんスクリーニング検査の便潜血検査は、出血のない早期大腸がんでは陰性になる可能性が高く、痔核や大腸炎などの良性疾患では陽性になるなど、診断精度が高いとは言えず、早期大腸がんの診断には有効性が低い。現在、大腸がんの腫瘍マーカーとして臨床の現場で用いられているCEAが早期大腸がん患者を発見できる確率は4割弱だとされている。
研究グループは、大腸がんに関連する過去の文献調査から、バイオマーカー候補となりそうなタンパク質をリストアップ。ターゲットプロテオミクスの手法を用いて、血清中の細胞外小胞(エクソソームを含む)で検出できないか検討した。
デンカ生研株式会社と共同で5年後の実用化を目指す
研究の結果、文献調査でリストアップされた約700種類の大腸がんバイオマーカー候補タンパク質のうち、約350種類のタンパク質を細胞外小胞で検出。最終的に、22種類のタンパク質、37種類のペプチドが大腸がん患者血清中で有意に発現量が増加していることが明らかになった。
さらに、それらのペプチドを用いて、大腸がん患者と健常者をどのくらいの精度で見分けることができるかについて検討した。その結果、アネキシンファミリーに属する4種類のペプチドでは、9割以上の高い精度で大腸がん患者を見分けることができたという。このアネキシンファミリーに属するタンパク質は、大腸がん組織で発現増大していること、大腸がんの発生、進展に関与していることが知られている。このことから、今回の血中でのアネキシンファミリータンパク質の検出は、大腸がんの発生を早期に検出できることが示唆されるという。
研究グループは今後、デンカ生研株式会社と共同で、この新規大腸がんバイオマーカータンパク質の測定法の開発を進め、5年後の実用化を目指すとしている。
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・医薬基盤・健康・栄養研究所 研究成果