iPS細胞株は、CiRA内の細胞調製施設「FiT」で作製
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は10月6日、臍帯血から作製した再生医療に使用可能なiPS細胞ストックの提供を開始したと発表した。これは、再生医療実現拠点ネットワークプログラムの一環として、2013年度より進めていた再生医療用iPS細胞ストックプロジェクトである。
再生医療用iPS細胞ストックプロジェクトは、HLAホモ接合体の細胞を有する健康なドナーからiPS細胞を作製し、あらかじめさまざまな品質評価を行った上で、再生医療に使用可能と判断できるiPS細胞株を保存するもの。iPS細胞株は、CiRA内の細胞調製施設「FiT(Facility for iPS Cell Therapy)」で作製している。
HLAは、ヒトの主要組織適合遺伝子複合体であるヒト白血球型抗原の略で、細胞の自他を区別する型。細胞や臓器を移植する際には、このHLA型をできるだけ合わせることで、免疫拒絶反応を弱めることができると考えられている。HLAホモ接合体は、父親と母親から同じHLA型を受け継いだ場合を指し、細胞移植においては、HLAホモ接合体であれば移植しても拒絶反応が起こりにくいと考えられている。
目的とする分化細胞に適したiPS細胞ストックが選択可能に
今回、提供を開始したiPS細胞株は、2015年に提供を開始した末梢血由来iPS細胞と同じく、日本人において最頻度にみられるHLAホモ接合体で、日本人の約17%をカバーできるという。
CiRAは、2016年8月に最頻度HLAホモ臍帯血由来iPS細胞ストックの提供を開始したが、製造過程での試薬取り違えの可能性が生じたため、2017年1月に出荷を停止していた。その後、製造管理体制を見直し、再発防止策を実施した上で、改めて同じ臍帯血からiPS細胞ストックの製造を行い、今回の提供を開始するに至ったという。
実際には、治療の際に移植する分化細胞を作製する研究機関で、末梢血由来iPS細胞と臍帯血由来iPS細胞を比較。目的とする分化細胞に適したiPS細胞ストックを選択することで、より有効かつ安全な再生医療に貢献できることが期待されるという。
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