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緑内障発症に関する新たな分子メカニズムを発見-山梨大ら

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2017年10月11日 PM02:00

細胞外ヌクレオチドとP2受容体の異常が緑内障の発症に寄与すると仮説

山梨大学は、細胞外ヌクレオチドとその受容体であるP2Y6受容体が眼圧のコントロールに重要であること、またP2Y6受容体の欠損によって眼圧が上昇し、「」に類似した症状を引き起こすという、眼圧をコントロールする新しいメカニズムを発見したと発表した。この研究は、同大医学部薬理学講座の小泉修一教授および篠崎陽一講師の研究チームが、同大医学部眼科学講座の柏木賢治准教授、東京都医学総合研究所視覚病態プロジェクトの原田高幸参事研究員、生理学研究所分子神経生理部門の大野伸彦准教授(現自治医科大学)、ブリュッセル大学のBernard Robaye教授、東京医療センター臨床研究センター分子細胞生物学研究部の岩田岳部長のチームと共同で行ったもの。


画像はリリースより

緑内障は、日本における中途失明原因第1位の疾患であり、最大のリスク因子のひとつとして「眼圧」がある。眼圧が上昇する事により、視神経が傷害されやすくなると考えられている。従って、緑内障の進行を遅らせるための治療として眼圧を下げる処置がとられる。すでに複数の眼圧を下げる点眼薬が治療に用いられているが、さまざまな副作用、単一の薬剤では効果が不十分な場合があること、薬剤の効果が徐々に減弱または消失する事がある、などの問題から新たな治療法の開発が喫緊の課題になっていた。

眼圧は、「眼房水」の産生と排出のバランスによって決まる。過去の研究成果より、眼房水にもヌクレオチドが存在する事、生理的な刺激に応じて眼の組織からヌクレオチドが放出される事、緑内障患者の眼房水には健常者に比べて非常に高濃度のヌクレオチドが含まれる事などが明らかになっている。そこで研究チームは、細胞外ヌクレオチドとその受容体であるP2受容体の異常が緑内障の発症に寄与する、との仮説を立てたという。

野生型マウスでも加齢によってP2Y6受容体発現や機能が顕著に低下

研究チームは、マウスの眼圧を低下させるヌクレオチドを探索。その結果、野生型マウスにおいてP2Y6受容体を選択的に活性化させるウリジン二リン酸(UDP)を点眼すると眼圧が低下する事を発見した。UDPによる眼圧低下作用はP2Y6受容体を欠損したマウス(P2Y6KO)では見られなかったという。

眼房水の動きを評価する実験モデルとして、マウスに投与した蛍光分子が眼の前房へと経時的に移行する様子をモニタしたところ、UDPは蛍光分子の眼への移行を顕著に抑制。眼房水産生を抑制するチモロールによっても同様の反応が起きたが、眼房水の排出を促進するラタノプロストでは起きなかったことから、UDPの作用は眼房水の産生を抑制した結果、起きたものと考えられたという。P2Y6KOマウスでは、野生型マウスに比べて眼への蛍光分子の移行が速く、恒常的に眼房水の産生が亢進している事が判明。眼房水の産生・排出のバランスが崩れると眼圧が変化するため、眼圧を計測したところP2Y6KO マウスの眼圧が顕著に高い事が明らかになったとしている。

また、慢性的な高眼圧は緑内障発症のリスクであるため、P2Y6KOマウスの眼の組織学的変化や視覚機能を調べたところ、野生型マウスでは週齢に関わらず網膜の菲薄化、網膜神経節細胞数並びに視覚機能に変化はなく、P2Y6KOマウスでは若齢(3~4か月齢)では顕著な異常は認められなかったが、(6~13か月齢)によって網膜の菲薄化、網膜神経節細胞数の減少そして視覚機能の低下が観察されたという。これらの結果から、P2Y6受容体の欠損は加齢に伴う緑内障発症リスクを増加する事が明らかとなった。さらに、P2Y6受容体は野生型マウスでも変化するか検討したところ、加齢に伴って発現が顕著に低下する事、ならびにUDPによる眼圧低下作用が減弱する事が明らかとなったとしている。

以上の結果より、 受容体を欠損すると眼圧上昇、網膜傷害、視覚機能低下など緑内障に関連する変化が観察され、緑内障発症リスクを上昇させる事が明らかとなった。併せて、野生型マウスでも加齢によって顕著にP2Y6受容体発現や機能が低下する事から、この事が潜在的な緑内障発症リスクとなりうる可能性が考えられるという。研究グループは、P2Y6受容体を効果的に活性化する、または発現を上昇させる薬剤が緑内障の治療ターゲットとして期待できる、と述べている。

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