■厚労省が論点
厚生労働省は4日、感染症を発症した患者が適切な抗菌薬治療を受けているかどうかを専門的に監視、管理し、処方医への支援を行う抗菌薬適正使用支援チーム(AST)の取り組みについて診療報酬で評価する論点を、中央社会保険医療協議会総会に示した。感染症専門医と薬剤師をコアメンバーとするASTが入院患者に介入したことにより、薬剤耐性の抑制と広域抗菌薬の使用量節減をもたらしたデータが示されていることから、薬剤師を中心に全国の医療機関で活発化するASTの活動が診療報酬で評価される可能性が出てきた。
わが国における薬剤耐性菌の検出割合は、他国と比べて多く、抗菌薬の使用量は多くないものの、広域抗菌薬の使用量が極めて高いことが問題となってきた。国の薬剤耐性対策アクションプランでも、抗菌薬の適正使用が柱の一つに位置づけられている。
院内感染対策に関する診療報酬は、感染制御チーム(ICT)の院内ラウンドによる院内感染事例の把握やサーベイランス情報の分析、評価によるモニタリングなどの取り組みを評価するため、地域の中核的な基幹病院を対象とした「感染防止対策加算1」(400点)、基幹病院と連携する中小病院を対象とした「感染防止対策加算2」(100点)が設定されている。厚労省によると、同加算の届出医療機関、算定回数は横ばい傾向にある。
こうした中、薬剤耐性の抑制や患者予後の向上に効果的とされる多職種によるASTの活動が注目されるようになってきた。ASTは、主に抗菌薬使用の最適化や抗菌薬適正使用支援のプロセス支援とアウトカム評価を検証する評価測定、処方医や医療専門職、患者への教育・啓発などの活動を行っている。
日本でも感染症専門医と薬剤師を中心としたASTの活動が全国の医療機関に拡大しているところで、抗菌薬適正使用支援プログラムによりASTが入院患者に介入した結果、薬剤耐性の抑制や広域抗菌薬の使用量が減少したとのデータが報告されている。これらASTの介入効果などのデータを踏まえ、厚労省は、抗菌薬適正使用の観点からASTの取り組みを評価する論点を示した。
診療側の万代恭嗣委員(日本病院会副会長)は、「感染防止対策加算の導入によって、地域での対策に効果が上がっている」と述べた上で、「薬剤耐性菌対策は喫緊の課題。診療報酬上も対策を進めるものと理解する」と同意。ASTを評価する場合の要件設定に当たっては、「あまり厳しくすると取り組みが進まなくなる。(適正使用支援の)プロセスの評価をお願いしたい」と要望した。
一方、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「改定財源が決まっていない中では判断しかねる」とした上で、「ASTの活動は、感染防止対策加算を届け出ている施設であれば当然やっていくべき」との考えを示し、AST活動の評価について判断を保留した。