■官民対話で厚労省
厚生労働省、文部科学省、経済産業省、内閣府の関係閣僚と製薬業界の代表者が政策について意見交換する「革新的医薬品創出のための官民対話」が2日に開かれた。その中で厚労省は、医薬品産業の競争力を強化する施策を盛り込んだ「医薬品産業強化総合戦略」の見直し案を示し、グローバル展開する創薬大国の実現を打ち出した。薬事規制改革を通じたコスト低減で効率性を向上させること、バイオシミラーを含む医薬品の生産性向上・製造インフラの整備など、六つの方向性から見直しを進める考えだ。
冒頭あいさつした加藤勝信厚生労働相は、「低コストで効率的な創薬を可能にし、最先端の医療が日本で早期に実用化するために、規制や事業環境の整備に関する検討をしっかりと進める。日本発の医薬品を海外市場、特にアジアに展開できる創薬大国の実現を目指したい」と述べた。
2015年に策定された同戦略では、臨床研究・治験の活性化など「イノベーションの推進」、後発品の使用加速化など「質の高い効率的な医療」、国際薬事規制調和戦略など「グローバルな視点での政策の再構築」の実現を目的に、医薬品産業の競争力強化に向け集中的に実施する施策を盛り込んでいる。
ただ、2017年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2017」(骨太方針)に示された後発品の数量割合80%、バイオ医薬品・バイオシミラーの品目数倍増などの目標を達成するには、さらに競争力の強い医薬品産業の実現が必要とし、同戦略を見直すこととされていた。
これらを踏まえ、厚労省は見直しの方向性として、▽日本発のシーズが生まれる研究開発環境の改善▽薬事規制改革を通じたコスト低減と効率性向上▽バイオシミラーを含む医薬品の生産性向上と製造インフラの整備▽適正な評価の環境・基盤整備▽日本発医薬品の国際展開の推進▽医療とサービスを融合させるプレーヤーの創出・創薬業界の新陳代謝を促すグローバルなベンチャーの創出――の6項目を示した。
この日の会合では、業界団体が見直し案に示された「バイオシミラーを含む医薬品の生産性向上」に対し、「医療費軽減など、コストの面からバイオシミラーが含まれているのか」と質した。これに対し、厚労省は「コストの側面だけでなく、生産技術の向上、製造体制を整備する趣旨も含まれる」とした。
また、患者数が少ないため、検証的臨床試験を行えない革新的医薬品の早期上市を目的とした「医薬品の条件付き早期承認制度」を今月中にスタートする考えも明らかにした。