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脳内のコンドロイチン硫酸の量に応じて神経回路の成長期が制御-新潟大

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2017年10月05日 PM02:00

子どもの脳に少量含まれるコンドロイチン硫酸

新潟大学は10月3日、脳内のコンドロイチン硫酸(CS)の量に応じて神経回路の成長期が制御されることを、世界で初めて発見したと発表した。この研究は、同大医歯学総合研究科 神経発達学分野の杉山清佳准教授、侯旭濱特任助教、分子細胞機能学分野の五十嵐道弘教授らによるもの。研究成果は、Scientific Reports誌に掲載された。


画像はリリースより

軟骨の成分としても知られるコンドロイチン硫酸は一般に「コンドロイチン」と呼ばれる物質とほぼ同様の物質で、脳内にも豊富に含まれている。大人の脳に含まれる多量のコンドロイチン硫酸は、神経の成長を抑制的に調節することが知られている。コンドロイチン硫酸は子どもの脳にも少量含まれているが、その作用は不明だった。

また、子どもの脳には、個々の体験・経験に依存して、神経回路を活発に作る成長期(=臨界期)がある。これまでに研究グループは、大脳の抑制性神経細胞の成熟とともに、臨界期が現れることを明らかにしている。しかし、どのような仕組みで子ども脳にのみ臨界期が現れ、またなぜ大人の脳には臨界期がないのか、いまだにわからない点が多かった。

脳内コンドロイチン硫酸の量の調節が臨界期のタイマーの役割

研究グループは、脳内コンドロイチン硫酸を減少させたマウスの解析により、少量のコンドロイチン硫酸が臨界期の誘導に必要不可欠であることを明らかにした。これまで、臨界期の回路形成の誘導と抑制には、それぞれ異なった分子メカニズムが働くと推測されていたが、今回の研究により、同じ分子であるコンドロイチン硫酸の量により制御されることが示されたという。

さらに、2光子顕微鏡を用いて、目に光を当てた際の視覚野のParvalbumin細胞(PV細胞)の応答を計測すると、コンドロイチン硫酸の異常な減少により、応答が減弱することが判明。 そのため、このマウスにPV細胞の機能を高める薬(ジアゼパム)を投与すると、1回目の投与により臨界期の始まりを、2回目の投与により臨界期の終わりを、それぞれ正常に導くことができたという。

コンドロイチン硫酸は、タンパク質に付加してプロテオグリカンという構造として体内に存在し、脳内ではタンパク質「アグリカン」と多く結合している。今回の研究では、コンドロイチン硫酸-アグリカンがPV細胞を成熟させる作用を持つOtx2タンパク質と結合し、Otx2をPV細胞に蓄積させ、逆にOtx2はPV細胞においてアグリカンの量を増加させる作用を持つことが示唆されたという。

臨界期は生涯に一度だけの特別な脳の成長期であり、一度誘導されると、一定期間の後に抑制される。今回の発表により、Otx2を介した脳内コンドロイチン硫酸の量の調節が臨界期の始まりと終わりのタイミングを決めるタイマーの役割を果たすことが明らかになった。近年、臨界期やPV細胞の機能異常が、、統合失調症など精神疾患の一因となることが示唆されている。さらに、精神疾患の誘因とPV細胞の周囲に蓄積するコンドロイチン硫酸との関連が報告されつつあるため、将来的には、コンドロイチン硫酸によるPV細胞の機能の改善が、精神疾患の症状の軽減に繋がることも期待される、と研究グループは述べている。

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